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なぜ「健康のために○○をする」とプレッシャーとなって精神的に負担に感じるのか?

2020.12.08

 今日も行けそうにないか——。サウナの話である。最近なかなかサウナに行けないのだ。今からどこかのサウナに無理矢理行ってもよいのだが、そうなると夕食兼晩酌が深夜近くになってしまう。明日の仕事状況を考えるとそれは無理な話だ……。

サウナに行くのを断念して公園沿いの道を歩く

 駒込駅前の本郷通りを歩いていた。先ほど用件が終わりようやく解放されたところだ。思っていたよりも長引き、一日中ずっと建物の中に篭りっきりになってしまった。

 もう午後8時半を過ぎている。当然ながら辺りは真っ暗だ。この辺りは駅前にしては商業施設や店舗が少ないのでそのぶん暗い印象を受ける。ともあれ何時間かぶりの外の空気を吸えてホッとする。夜はだいぶ冷えるようになったが外を歩くにはまったく問題ない。

 今味わっている解放感のままに、どこかのサウナでひと風呂浴びてみてもよかった。最近なかなかサウナに行けていないのだ。

 しかし現実問題として可能なのかと考えてみると、明日が休みならともかく、今からそんなことをするのは難しそうに思えてくる。このご時世で全体的に飲食店の閉店時間が早まっていることもあり、ひと風呂浴びてから街に出てもどこにも入る店がない可能性はきわめて高い。

 個人的には飲食をした直後にサウナに入る気にはなれい。どこかで飲んだ後に少し時間をおいてからサウナに入るとすれば、もはや1泊することが前提になってしまう。明日の仕事を考えるとそれは無理だ。

 とするとやはり今回もサウナは断念せざるを得ない。なんということだ。こうなってくると、サウナについて考えることが逆にストレスになってしまいそうだ。サウナで心身をリフレッシュするはずが、皮肉なことにこれでは逆効果になる。どうやらサウナのことはいったん頭の中から除外したほうがよさそうだが……。

 歩いていると「六義園」の入り口が見えてくる。もちろんとっくの前に営業時間は終了しているが、入り口にも木立が並び自然の息吹を感じさせてくれる。少しでも自然に触れられる体験が貴重であることは間違いない。都市生活者であればなおさらだ。

 この公園沿いの道を巣鴨方面に歩いてみてもよい。園内には入れないにしても、レンガ塀に沿って木立が並ぶこの道を歩けば、暫し自然に触れ合うことができるだろう。サウナに行けない中にあっては願ってもいない機会だ。

※画像はイメージです(筆者撮影)

“森林浴”にはほど遠いものの木立が並ぶ公園沿いの通りを歩く体験はよい息抜きになった。今日のように一日中、窓のない部屋にずっといた日はなおのことだ。

 白山通りを右折して巣鴨駅に向かう。駅界隈で“ちょっと一杯”してから帰宅するとしよう。

 駅前ロータリーの奥の雑居ビルにはカプセルホテル併設のサウナがあり、これまでに何度も入ったことはあるのだが残念ながら今回は素通りせざるを得ない。明るいうちに巣鴨へ来れる機会が到来することを願いつつ……。

 巣鴨駅の駅前ロータリーの周囲は飲食店が密集するエリアだ。かつて入ったことがある店もいくつかある。何を食べるのかは特に決めていなかったが、以前よく行っていた居酒屋の一階にあるホルモン焼きの店に目が留まる。店の前に展示してあるメニューを見ればなかなかよさそうだ。入ってみることにした。

「自然に触れるべきである」というプレッシャーが精神的負担に

 想像していたよりも店内は広く、テーブル席のほかにも一人焼き肉ができるカウンター席もある。当然ながらそのカウンター席に案内され、とりあえず生ビールを注文。

 店がおすすめしている牛ホルモンの三種盛りがあり、素直にそれを注文する。箸休めとして頼んだセロリの浅漬けはすぐに出てくる。続いて目の前に七輪が運ばれてきて準備が整う。

 ……今さっきまでの散歩のように、日常の中で自然に触れる習慣を持つことは大切なことだろう。特にメンタルの健康のために定期的に自然に触れる時間を持つことが各種の科学的研究からも推奨されている。

 都会に暮らす人々の多くはあえて言われなくともその重要性を理解しているのだろう。そして意識的に自然の多い公園などに行く機会を作っているのかもしれない。だがそこにも“落とし穴”があるようだ。自然に触れることがある種の“義務感”になってしまうことで、精神的な負担が生まれメンタルヘルスを損なう可能性が最新の研究で報告されているのだ。


 研究チームは、うつ病の人が精神障害のない人と同じくらい頻繁に自然を訪れていることに驚きました。不安障害の人々もかなり頻繁に自然を訪れていました。全体として両方のグループは、自然環境への訪問中に幸せを感じる傾向があり、不安が少ないと報告しました。

 しかし、訪問が内発的選択ではなかった場合、自然の恩恵は損なわれているようです。おそらく善意のある人たちによって自然を訪れるようにと促され、それによって感じたプレッシャーが大きければ大きいほどモチベーションは低下し、より不安を感じました。

※「University of Exeter」より引用


 英・エクセター大学の研究チームが2020年11月に「Scientific Reports」で発表した研究では、18ヵ国1万8000人を超える人々から、自然に触れなければならないと感じる理由、自然環境を訪れる頻度、および自然に触れるべきであるというソーシャルなプレッシャーが訪問中の感情的な体験に及ぼす影響についてのデータを収集して分析した。

 分析の結果、なるべく自然に触れるべきであるというプレッシャーが訪問を促進する可能性がある一方で、自然との触れあいによる感情面の恩恵と幸福感を損なう可能性があることが示唆されることになった。つまり「自然に触れなければならない」ことにプレッシャーを感じ、ある種の“義務感”で訪れているのであれば、そこには本来自然に触れて感じるはずの喜びや幸福感が失われてしまうのである。

 注文した三種盛りがやってきた。右からカシラ、レバー、サガリだ。生ビールを飲み干してしまったのでホッピーの白を注文する。ホッピーは久しぶりだ。ともあれさっそく肉を焼く。

※画像はイメージです(筆者撮影)

※画像はイメージです(筆者撮影)

 食べ方としてはカシラは味噌で、レバーは長ネギ入りのゴマ油で、そしてサガリはタレで食べるのがセオリーであることを店員さんから教わる。確かに間違いない。美味しい。

心身の健康に資することでも無理は禁物

 本来は心身の健康に資する喜ばしい体験でも、それを義務感で行うようになれば本末転倒ということになる。今の自分がプレッシャーに感じているサウナと同様のメカニズムと言えるかもしれない。癒しがストレスに変化してしまうのだ。

 お店が自信を持って勧めているだけに肉はどれも美味しい。豚ホルモンも食べたくなり豚の大腸のブツ切であるシロコロの塩にポッピーの中(焼酎)を注文する。

 公園での散歩もサウナも身体に良かれと思ってはじめるものだが、そうした健康増進習慣の中でも一般人レベルで本格的なのはジム通いということになるだろう。だがやはりこのジム通いは多くにとって長くは続かないようだ。

 一説によれば、平均的なフィットネスクラブ(スポーツジム)では、入会から半年で約70%が退会、1年後には約10%しか残っていないという驚きの数字が示されている。最初は“汗を流す喜び”を求めてジムに通っていても、次第に義務感を感じてきてしまい、通うことがストレスになってしまうのだろう。まったくもって皮肉な話である。

 シロコロが届いたのでさっそく金網に乗せてじっくりと焼く。消化器系のホルモンなのでよく焼かなければならない。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 離れたテーブル席の団体客は同じ会社で働く人々のようだ。会社の正式な飲み会というわけではなさそうだが仕事の話に余念がない。来年の展望などの話を熱く語る人々に居合わせるとやはり師走を実感する。今年もあと僅かだ。入店してきた常連さんらしき一人客がひとつ席を置いた隣にやって来て店員さんと話している。

 頃合いを見てよく焼いたシロコロを頬張る。この種のホルモンは必然的に何度も咀嚼しなければならなくなるのだが、別に嫌にはならない。噛むほどに脂が口の中に広がり、ホルモンでしか味わえない食感が楽しめるというものだ。

 ここで食べ終わった後にサウナに行ってみる考えも一瞬頭をよぎったが、それはまったく無理な話だ。師走でもあるし、目下の感染症のこともあり、とにかく無理は禁物である。自分で自分の首を絞めるようなことをしても仕方がない。

 初めて入ったホルモン焼きの店であったがじゅうぶん満足できた。そして価格的にもかなりお得である。さて店を出てもう一度駅前のサウナの前を素通りしてから電車に乗って家に帰るとしよう……。

文/仲田しんじ

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