
真冬のおこもり動画鑑賞タイムにピッタリな傑作サスペンス・スリラーを、Amazon Prime Videoより紹介する。
2019年よりAmazon Prime Videoにて独占配信中の映画『ブロー・ザ・マン・ダウン-女たちの協定-』だ。
主演は『HOMELAND』デイナ役のモーガン・セイラー。
大手映画批評サイト『Rotten Tometoes』では批評家支持率98%を獲得、絶賛されている。
あらすじ
アメリカ最東北部メイン州にある架空の港町、イースター・コーヴ。
病気の母親を看取った姉プリシラ(ソフィー・ロウ)と妹メアリー・ベス(モーガン・セイラー)は、経済的に窮地に立たされ途方に暮れていた。
母親が姉妹に残したのは、倒産寸前の小さな鮮魚店と借金と、担保に入れられた自宅。
閉塞感漂う港町で精神的に追い詰められ自暴自棄になったメアリー・ベスは、酒場で出会った男と車で移動している途中に襲われ、自分の身を守るために男を殺してしまう。
パニック状態のメアリー・ベスは姉プリシラに助けを求める。ふたりは男の死体を魚用クーラーボックスに入れ、海に投げ捨てる。
数日後、岩場に死体が打ち上げられたので小型ボートを貸してほしいと警察官から頼まれたプリシラ。おそるおそる死体を確認すると、それは先日殺した男ではなく、若い女性だった……。
見どころ
登場人物たちが口ずさむ印象的な労働歌の歌詞には、実は重要なヒントが隠されている。本作のタイトルも、歌詞の中から引用されたものだ。
凍てつく海で、荒波に揉まれながら戦う男たちのための、勇ましい歌。それを、漁師たちだけでなく、港町で暮らす主婦たちも朗らかに口ずさむ。
家族や来客のためにお菓子を手作りし、かいがいしく他人の世話を焼き、綺麗に掃除した自宅で編み物を楽しむ、あたたかく良妻賢母的な女性たち。
労働歌に込められた女性たちの想いに気づいたとき、きっと戦慄するはずだ。
そして本作で重要な役割を担うのは、港町で売春宿を営む高齢の独身女性エニッド。
けばけばしい派手な外見に鋭い目つき、口調も乱暴なエニッドは、いかにもヒール役といった感じに描かれている。
夫と子どもを愛する家庭的な主婦VS.売春宿の独身経営者女性。女の敵は女。
……こんな風にシンプルな対立関係ですべての物事を捉えることができれば、たしかに楽かもしれない。でも実際の社会はもっと複雑に利害関係が絡み合っていることの方が多いのではないだろうか?
寒々しい港町の映像と不安をかき立てる音楽が、登場人物たちの鬱屈した気持ちを代弁しているかのよう。映像も音楽もストーリーも素晴らしく、自信をもってオススメしたい。
映画『ブロー・ザ・マン・ダウン-女たちの協定-』
Amazon Prime Videoにて独占配信中
Courtesy of Amazon Studios
https://www.amazon.co.jp/dp/B08CRQM5ZL/
文/吉野潤子
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