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「キャリアメールの持ち運び」は本当に必要なのか?

2020.12.06

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は総務省の意向どおりに携帯電話料金は値下げできるのか? 議論します。

※新型コロナウイルス対策を行っております

「キャリアメールの持ち運び」は本当に必要?

房野氏:総務省は公正な競争環境を整備するため、「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」で今後取り組むべき事項をまとめました。キャリアメールの持ち運びやeSIMの促進などが含まれていますね。

房野氏

石川氏:キャリアメールについては、アクション・プランが公開された後、報道の内容が変わってきた。最初はメール転送だという話だったのが翌日から変わって、キャリアを移行しても元のキャリアメールを見られるようにするという話になった。たぶん、最初、記者が勘違いしたんだと思います。さすがに転送はないだろうと。法林さんも記事に書いていらっしゃいましたが、転送にすると元のキャリアと契約し続けなくてはいけない。コストを誰が負担するんだという問題もある。ただ、メールサービスのオープン化によって、例えばドコモメールのサービスが分離されてauでも使えるようになるということも考えられる。

石川氏

石野氏:ISP(インターネットサービスプロバイダ)はメールサービスだけも提供していますしね。接続サービスを解約してもメールは送受信できる。

石野氏

石川氏:そう、それはあるんだけど、令和の時代にケータイメールが絶対必要なのか? という根本的な問題がある。

法林氏:その通りだね。

法林氏

石野氏:「キャリアメールが使えないからMVNOに移れない」ということに対処してくれと、イオンモバイルなどはずっと要望していました。ただ、今、料金値下げに絡めて大々的に言うことか、とは思いますね。

法林氏:「今さらそんなことを言っても意味ないよ」という感じ。転送という行為はセキュリティ上も結構やっかいです。今はOS上で制限できるようになってきたけど、パソコンでもウイルス拡散はメール経由が多い。メールの出所は1か所の方が、何か問題が起きた時にケアしやすい。今さら転送する理由はない。

 今さら使わないだろうと言われることもあるけど、キャリアメールを使っている人がいるのは事実なので、サービスは存在してもいいと思う。でもキャリアメールのためにMVNOに移行できないなら、「移行するために、GmailやOutlook.com、iCloudメールを使いましょう」と伝えた方がお互いのためになる。

石川氏:ケータイメールを使い続けたい人と、格安スマホに移行したい人のリテラシーやモチベーションが同じレベルだとする考え方がよくわからない。あと、なんだかんだいって、ドコモのメールを持ち続けたら、結局ドコモから「またドコモへ戻ってきませんか?」っていうメールが来ると思うんですよ。

石野氏:そりゃ来ますね(笑)

石川氏:そうなると思うので、あまり意味ないんじゃないかなって思った。

石野氏:スマホで使うなら、キャリアメールよりもフリーメールやメッセージサービスの方が使いやすいですよね。

法林氏:メールサービスを移行させる方がいい。

石野氏:その啓蒙に力を注いだ方が、LINEも嬉しいし、キャリアも嬉しいし、MVNOのユーザーも嬉しいし、みんないいんじゃないかと思うんですけどね。

法林氏:契約しているプロバイダのIMAPでできるメールサービスを作ればいいだけの話。そっちの方がよっぽど簡単。

石川氏:メールのシステム自体がもう破綻しているような気もするしなぁ。もうメールから逃れたい。

法林氏:海外からも迷惑メールが鬼のように来る。サーバに全部残っているから、結局消さなきゃいけないわけですよ。ゴミ箱をひたすら空にするんだけど、片付けている最中にも届く。何のために、こんなに一生懸命メールを選んでゴミ箱を空にしているのかと思うよね。

eSIMの普及は料金値下げにはつながらない

石野氏:eSIM促進の件もね……

法林氏:なんだそれって感じだよね。

石野氏:そりゃeSIMになれば乗り換えやすくはなるけど、eSIMでの機種変更の大変さをあなたたちはわかっているのかと。しかも便利だけど、eSIMで料金は下がらないですよね。

石川氏:料金が下がるのとは別の話。手続きのハードルは明らかに上がる。やっとSIMカードが世間になんとなく認知されたかなというレベルなのに、さらにeSIMと言われても一般ユーザーにはピンと来ないと思う。

法林氏:議員さんが提言したけど、それを受けて判断するのは政府であり総務省。政府であり総務省の人間が、この提言が果たして適切かどうか、ちゃんと判断できていないわけですよ。こんな人たちに日本の通信行政を託す必要はないわけですよ。僕としては早く日本版FCC(Federal Communications Commission:連邦通信委員会。アメリカの放送通信事業の規制監督を行う機関)を作って、石川長官に就任していただきたいね(笑)

石野氏:eSIMが普及したからといって……というか端末をどうするのかと。機種変更が面倒くさい作業になる。

石川氏:絶対トラブルが発生する。eSIMを理解している人はごく限られているので、じゃあeSIMでやってくださいとなった時に、誰がそのサポートをするのかという問題がある。

石野氏:お金だってかかる。SIMベンダーが儲かるだけというか。結局、無料にしたら1日5回も6回もeSIMを移し替える、僕のようにやっかいなヤツが出てくる(笑)

石川氏:キャリアはeSIMを大して売る気がない。端末メーカーはeSIMを搭載したいんだけど、キャリアが載せさせてくれないからSIMフリー端末でしか対応できない。ということを考えると、総務省が押し切ってeSIMを普及させるのはアリといえばアリ。だけど、それが料金値下げにはつながらないよね。

房野氏:以前、eSIMは気軽に契約できるので、MVNOに適しているという話をこの座談会でもしていましたよね。でも、eSIMを実現するシステムを持つのも大変そうです。IIJがeSIMプランを提供していますが、MVNOで対応できるところは少なそうな気がします。

石川氏:MVNOがeSIMに対応しようとしてコストはどうするのか。IIJはなんとかできたけれど、あのシステムをすべて各MVNOが持つのかといったら……そのコストが逆に値上げ圧力になるだろうし。

法林氏:閉じた環境だと便利かもしれない。楽天モバイルではeSIMの切り替えがmy 楽天モバイルでできる。自前のネットワークで自前の発行だから、それは便利だろうと思う。でも、例えばドコモからauに乗り換える時、例えばeSIM発行のためのQRコードを読み取るにしても、データを持ってきてQRコードを表示するための回線が必要なわけですよ。その回線を持っていない人もいる。

石川氏:スマホで手続きすると、スマホ画面上にQRコードが表示されるので、QRコードを読み取れない(笑)

房野氏:結構面倒ですよね。

法林氏:一般ユーザーが今のeSIMの仕組みを理解するのは難しいと思う。施策を決める人は、それが無理だろうと判断できないとダメですよね。

公取委の発言には問題がある?

房野氏:料金値下げについての公正取引委員会の発言について、石川さんは矛盾しているとおっしゃっていましたね。

石川氏:公取委は「接続料を下げましょう」とか「中古端末市場を拡大しましょう」と言っていますが、中古市場は結構厳しくなっていると思います。1つには安いスマホがたくさん出てきたこと。iPhone SE(第2世代)の新品でも5万円くらいで買える。また、端末割引がなくなったので新しい端末の購入が減って、結果として端末市場全体が縮小しています。市場が縮小すると中古端末もたくさん出てこない。公取委ががんばっても意味がない。もっと根本的なことを考えなくてはいけないとも思います。一方、接続料を安くするという話もありますが、接続料を安くすると料金は下がるけど、MVNOの利ざやも減ってしまうので厳しくなるんじゃないかなと思います。

房野氏:ここで公取委が出てきた理由って何なのでしょう。

石川氏:総務省だけでなく、公取委側からもキャリアに対して厳しく対応していくというアピールだと思います。

石野氏:公取委は以前から関わっていますよ。Appleがキャリアと取り交わしていたという「iPhone Agreement」を公取委が暴露したあたりからですね。

法林氏:そうなんだけど、でも公取委もダメだと思いますよ。ドコモの完全子会社化を認めて、NTT独占OKといっているようなものなので。

石野氏:そうなんですよねぇ。

法林氏:あり得ないですよ。

石野氏:Appleとキャリアの関係の件についても、もうほぼ問題が解消した時点で公表してもね……

法林氏:小野寺さん(KDDI 相談役の小野寺 正氏)の「私の履歴書」を一から読み直せと言いたい(笑)。しかも、総務省の誰も何もコメントしていない段階で、公取委が大丈夫だと言ってしまっている。あれはあり得ない。

石川氏:ドコモの完全子会社化はすべて上の方で話ができ上がっている感じ。というか、菅総理大臣の思惑を感じます。

菅 義偉 内閣総理大臣

キャリアは素の料金プランを明確にすべき

石野氏:総務省は色々言われつつも、必要な手は打っているような感じがする。もう、やり尽くしている感じがするんですよね。あとは単純に宣伝が足りないだけじゃないかなって気もするんです。

法林氏:「Go To MVNO」でいいわけですよ。

石川氏:本当に持ち上げるべきはMVNO。だからキャリアを乗り換えやすい環境を整えた。総務省の人たちはちゃんとやっているんだけど、菅総理が「4割値下げ」と言っているから、国民の期待として「大手3キャリアが値下げするんでしょ」という方向に目が向いている。こんなことでは誰も大手キャリアの契約をやめませんよ。このままでいいじゃんと思わせてしまっているのが大きな間違い。

法林氏:菅総理なり武田総務大臣なりが、「主要3キャリアはこれからは5Gを含むインフラ投資が必要。携帯電話料金を下げるために、これからはMVNOを今まで以上に支援していきたい」と一言発言すればいいんですよ。

武田良太 総務大臣

石野氏:そして自分もMVNOに変えればいいんですよ。だって歴代の総理は、例えば食品トラブルがあった際にも自ら食べて安心だとアピールしてきましたよね。同じように「MVNOに変えても安心ですよ」って言うくらいしてもいい。

法林氏:関西へ行った時にmineoで機種変更してくればいい。

石野氏:菅総理はパンケーキの横にフィーチャーフォンを置いている場合じゃないですよ(笑)

石川氏:あのアクション・プランでは値下げは起きないだろうし、ちょっとミスリードかなという気がします。アクション・プランは、たぶん即効性はなくて時間のかかる話だと思う。一方で、値下げの議論は続くだろうと思います。20GBプランの料金を下げなさいという方向性だったので、KDDIはUQ mobileで20GB 3980円の「スマホプランV」(2021年2月以降に提供予定)を作って、国際的に比べても遜色ないはずだと言っている。ドコモもおそらくサブブランドを作って、20GBプランでいくらというやり方が現実的なのかなと思っています。

【参考】データ容量20GBで月額3,980円のUQ mobile新料金プラン「スマホプランV」を提供

石野氏:ドコモはそんなにすぐプランを作れるかな。

石川氏:作れなくても、やる方向だと言えばいい。

石野氏:KDDIの髙橋社長は、以前の決算会見から「20GBプランはUQ mobileでやります」とすごく言いたげな感じだった。不自然にUQ mobileのことを話したり(笑)

KDDI株式会社 代表取締役社長 髙橋 誠氏

石川氏:auブランドは5Gで使い放題、マルチブランドではプランを選べるようにするってことだと思います。この辺でシャンシャンって、手を打ちたいってことじゃないかな。

法林氏:キャリアは本当に料金プランのアピールが足りないなと思う。知り合いに「auのNetflixのバンドルプランを契約しようと思う」と相談されたので、いいじゃない、TELASAも付いていて結果的に安くなるよと答えたら、「でも、すでにNetflixを契約しているから……」という。そのまま移行できるよと言ったら、「そうなんですか、知りませんでした」と。

 その人はIT業界の人で一定の知識がある人だったんだけど、そんな人でもこんな感じ。みんな知らないんです。既存のNetflixプランのままauのプランに変えられる。アカウントを連携できて、Netflixの上位プランを契約していても、差額分はauかんたん決済で引かれるだけです。auのプランに変えても何も変わりません。

石川氏:ドコモのギガホ/ギガライトにAmazonプライムの利用料1年分がついてくる件も、「すでにAmazonプライムを契約しているから関係ない」と思っている人がほとんどだったんですよね。いや、そうじゃなくて、設定すれば、1年間Amazonプライムの利用料の請求が止まるということが伝わっていなかった。我々メディアの力不足もあるとは思うんですけど。

法林氏:料金施策は、わからない人にはわからない。キャリアとしてもう少しケアした方がいい。

房野氏:なぜこれほど携帯電話の料金プランはわからない、複雑だと言われるのでしょうね。

石川氏:auは別として、ドコモとソフトバンクの料金プランの立て付けはシンプルと使い放題の2つしかない。でも、複数回線でいくら、光回線とのセットでいくらと割り引かれた表示が続くので、これがわかりにくい原因かな。

法林氏:素の料金プランをちゃんと明確にすることが大事。

石野氏:今は逆になってしまっているんですよね。割引をもっとも適用した値段を最初に提示している。

法林氏:最大限引いた値段しか出さない。そうじゃなくて、素の料金プランでみんな戦うべきなんですよ。auは、料金の詳細ページをスクロールしていくと、下の方に2年契約だといくら、家族割だといくら割引という表があって、割り引かれていく数字が増えていって最後の値段がわかるようになっている。それだったら理解できる。でもまぁ、僕らは契約の意味がわかっているから「ここが正価なんだ」とわかるけれど、一般のユーザーにはそれがわからない。

石野氏:最初に「3480円から」とか言っちゃうから「違うじゃん」となる。

法林氏:本当の料金は8000円で、「最大何千円引き」と言うならわかる。

石野氏:その表現でいいと思うんですけどね。

法林氏:最初に割り引かれた値段を出しているからわからなくなる。

房野氏:あと、SNSを見ていると、キャリア決済で買い物をした金額が加わった値段が請求されていることを、ちゃんと理解していない人もいるようですね。

石川氏:料金が高い高いと文句を言うけど、何に対していくら払っているかわかっているかなと。

石野氏:僕のドコモの7月の料金は8万円ですから。

房野氏:すごい!

法林氏:何に使ったの?

石野氏:Amazonで端末を買ったり。

石川氏:自分もdミールキットを契約しているので、それは毎月数万円かかっています。それは食費じゃないですか。

 ちゃんと調査できていないんですけど、昔は新聞を取って、レンタルビデオを借りて、雑誌を買ってと支払いが分散していた。それが今はスマホでYahoo!ニュースを見るし、YouTubeで映像を見る。過去に払っていたものがスマホに集約されているような気がするんです。

【参考】dミールキット powered by Oisix | サービス・機能 | NTTドコモ

石野氏:雑誌はdマガジンになり、ビデオはNetflixになり。

石川氏:ということを考えると、実はそんなに負担は上がっていなくて、下手したら携帯電話の料金自体はむしろ下がっている可能性もあるんじゃないかなって気がしています。

法林氏:本来はデータの単価で比べるのが筋。あとは通話料の世界だけ。

石野氏:通信費はそんなに高いかなぁ。昔はもっと支払っていた気がするけどなぁ。

法林氏:FOMAのパケ・ホーダイの頃は、月額基本料が6000円くらいで、さらにデータ通信料金として8000円くらい払っていた。今は断然安くなっているんですよ。

石川氏:できることも増えているし。

石野氏:通信費が増えているというのは、加入する人が増えていて平均値として増えているということなので、それがそんなに悪いことなのかなと思うところがちょっとあります。

法林氏:SNSだからかもしれないけど、前回の菅さんの4割発言に比べると、今回は「そこじゃないんじゃない?」とか「携帯電話料金を下げる前にこっちじゃない?」という意見をかなり見るようになった気がする。

石川氏:ちょっと風向きが変わりましたね。

石野氏:新聞もそういう記事が増えてきていますね。

法林氏:5Gのインフラを作る時期に、これでいいのかという記事もあった。経済ジャーナリストの町田 徹さんみたいな人が、携帯電話料金の値下げを単純に喜んではいけないと書くくらい。ちょっとびっくりしましたね。

......続く!

次回は、楽天モバイルについて話し合う予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘

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