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「iPhone 12」シリーズから垣間見えるアップルが描く未来

2020.12.03

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は新型iPhone 12から見えてきたアップルの戦略について議論します。

※新型コロナウイルス対策を行っております

iPhone 12シリーズの注目点は?

房野氏:新型「iPhone 12」シリーズが発表・発売となりましたが、みなさんはどのような印象をお持ちでしょうか。

iPhone 12/12 mini

iPhone 12 Pro/Pro Max

房野氏

石川氏:今回の4モデルはセグメント分けがしっかりしている印象です。一般的なユーザーにはノーマルのiPhone 12がいいし、小さいスマートフォンが欲しいユーザー向けにiPhone 12 miniを登場させた意義は大きい。これは日本でも売れるでしょう。「iPhone SE(第2世代)の機能で十分だよ」とする、価格優先のユーザーでも気になる存在になるでしょうね。

iPhone 12 Pro/Pro Maxの2モデルはLiDARスキャナの精度が高く、iPhone 12 Pro Maxはセンサーサイズが大きい。何よりも動画の精度が向上している。Dolby Visionの効果も思ったより優れていますね。

通信キャリアの提供するエリアが狭いという課題はありますが、5Gはこれからどんどん普及するし、キャリアの違いで購入先を選ぶ必要はないと思います。

iPhone SE(第2世代)

石川氏

石野氏:僕も新型iPhoneの動画性能にびっくりしました。iPhone 12シリーズで再生すると輝度がすごく高くなり、コントラストもはっきりしている。静止画撮影性能はiPhone 11に比べて良くはなっているけれど、じっくり比べないとわからないくらいの差ですね。

石野氏

石川氏:動画を共有する際の制限がiPhone 12シリーズにはある。SNS全盛の今、ちょっと残念ですよね。そんな中、FaceTime HDの性能はすごい。5G回線を使う恩恵ってこういうことかなって思います。もちろん、Wi-Fiでも使えますけど(笑)

石野氏:auの5Gエリア内だと自動的に動画が高画質設定になる、「au 5Gエクスペリエンス」も便利です。

石川氏:要は自動でできるってことが大事。

石野氏:通常、5GでFaceTimeや動画を高画質化する設定って、設定内の深い領域にあります。手動でやればできますが、設定をいじる人が少ないと考えられる中、料金プランに連動させて自動で設定が切り替わるのは、いいアイデアだと思いました。

房野氏:ほかのキャリアの場合は、設定しないとiPhone 12シリーズは高画質に切り替わらないですよね。

石野氏:auを含め、通常の料金プランでは、設定なしで動画が高画質に切り替わりません。ただし、auの「データMAXプラン」に加入すればiPhone 12シリーズに組み込まれた判定機能で、5Gエリアでは自動で高画質に切り替わるようになります。

房野氏:ほかに気になるポイントはありましたか?

石野氏:普通にスマートフォンとしてかっこいいなっていうのはありますね。この金ピカぶりといい、かっこいいじゃないですか、iPhone 12 Pro。

房野氏:写真よりも実物のほうが断然いいですよね。

石川氏:今回のiPhone 12シリーズはボディが角ばっているじゃないですか。この角張った形は、アンテナの受信のことを考えたのかなって思います。3Gから4Gに切り替わった当時もボディが角張っていたんですよね。世代が変わるタイミングでiPhoneは、角張った形を採用することで安定した受信ができるようにしているのかなぁと思います。

法林氏:iPhoneは多くのバンドに対応しているので、受信感度が特別に優れているわけじゃない。安定するためには、少ないバンドのほうが楽なのは当たり前なので、iPhoneって作るのが大変なんですよ。でも、今回は角張った形によりボディ側面を有効利用できるし、アンテナを垂直方向にも収納できる。アンテナのためにこの形になったという石川君の考えには納得できます。

法林氏

石川氏:アップルは5G用にカスタマイズした部品を使っているとのことなので、きちんとスペースを作ってアンテナが収まるように設計したと思います。5G対応に気合いが入っているなって思いました。

房野氏:5G搭載は中国のiPhoneユーザーの購買欲を高めることになるのでしょうか。

法林氏:もちろんです。アメリカと中国で人気を得る、多く売っていくためには、5Gを訴求せざるを得ないです。

iPhone 12から見えてくるアップルが描く未来

法林氏:あえて否定的なことを言わせてもらうと、技術的な進歩はあまり感じません。ユーザーからのコメントを見ていると、例えば画面内指紋認証とか、ノッチを廃するといった変化が見られず、ほかのスマートフォンに比べて進化が小さいという意見が多かった。

Androidと比べる人は少ないかもしれないけれど、ユーザーが「こうなるといいなぁ」と考えていた新型iPhoneへの期待は、あまりかなえられてないんじゃないかな。5Gに関しては頑張っていると思うけれど。

あと、軽量化されたモデルはあるけれど、全体としてデカいし重い印象。他社製品に比べると、ベゼル部分も厚い感じがする。デザインもよく、仕上げも抜群にいいけれど、まだまだ甘やかされている印象があるかな(笑)

石野氏:僕は、重量が軽くなった感じがしますけどね。

法林氏:それはiPhone 11と比べてでしょ。

石野氏:まあ、そうですね。でも許せる範囲かなって思います。確かにProラインはずっしりした重みがありますけれど、ステンレススチールだったらしょうがないかなって思えるし。この美しい輝きを出すためなんだろうなって。モノって、重さ=高級感みたいな感覚もありますしね。

法林氏:Proラインと通常のラインを明確にすみ分けたのはおもしろい。iPadはうまく分けられていた感じがしていたけれど、今回の新型iPhone 12シリーズでやっと実現したと思う。iPhone 12 Pro/12 Pro Maxは、肩に大型機材を担いで映像を撮るようなプロフェッショナル向けだけではなくて、スマートフォンで機動力高く撮影する、YouTuberなども含めたプロ向けなのかなって思いました。

石川氏:TikTokをキレイにとりたい人にも好まれる感じですね。Xperiaの場合は本気で「映画撮るぞ」っていう性能に偏ってしまっている感じがするので。

石野氏:Xperiaの、特にプロの動画撮影用アプリは映像制作者向けレベルになっていて、僕では完璧には使いこなせない(笑)

法林氏:このあたりがやっぱり、アップルらしいプロの敷居の設定の巧さですよね。しっかりユーザーの声を反映できているのはさすがですね。

房野氏:iPhone 12とiPhone 12 Proが同じサイズになったのはいかがですか?

石川氏:iPhone 12とiPhone 12 Proが同じサイズなのはちょっと微妙かもしれませんね。そうなるとiPhone 12 Proは中途半端な印象になりかねない。

法林氏:とは言っても、iPhone 12 Pro Maxだけなのもつらいので、iPhone 12 Proはもう少し大きくして差をつけても良かったかなって思います。

石川氏:ただ、ケースのこととかを考えると、画面サイズを4つに分けるのは難しいかもしれない。最初4モデルが登場するって聞いた時は、国によって発売される端末がセレクトされるのかもと思いましたが、結果全モデル発売になっていますし。

法林氏:4モデルというよりは、3サイズ4モデルっていう感じかな。

石野氏:iPhone 12 Proはセミプロ向けみたいな感じですかね。でも、iPad Airの指紋認証は、iPhone 12シリーズに搭載してほしかったなぁ。

iPad Air

法林氏:コロナ禍が世界中で問題になったタイミングは、おそらく2020年初頭。当時ではもう設計の変更ができなかったんでしょうね。

石川氏:そう考えると、2021年に発表されるであろう、iPhone 12SなりiPhone 13には指紋認証が搭載されるかもしれませんね。

房野氏:端子の規格はどうですか。USB Type-C待望論もありますが。

法林氏:USB Type-Cは今後も採用されないでしょうが、MagSafeの存在を考えると、アップルはLightningを本当はやめたいんじゃないかな。

石川氏:そうですね。いずれ充電するための端子は、iPhoneからなくなると思っていますが、アップルはサードパーティ製の充電器が乱立するUSB Type-C規格より、自社規格の端子のほうが充電器のクオリティをコントロールしやすいんだと思います。今回のMagSafeも、端末側が充電器の情報を読み取って、アップルの認証を受けたものだと認識して初めて、充電できるような仕様になっていますし。

法林氏:そこがアップルの抱えているジレンマで、マーケットでのシェアがありモデル数が限られるゆえに、サードパーティは製品を作りやすくて乱立しがち。でも、粗悪な充電器のせいでiPhoneの電池が爆発した……なんてトラブルは避けたい。そう考えると、今後もUSB Type-Cの採用は難しいんじゃないかと思う。もしかしたら、ProラインだけはLightningをやめるかもしれませんが。

石野氏:iPad ProやiPad AirはUSB Type-Cを採用したので、iPhone ProにUSB Type-Cが搭載される可能性はあるでしょうね。

法林氏:実は、iPhone 12シリーズに同梱されるケーブルの仕様が変わっています。Lightning端子の反対側はUSB Type-C端子になっている。でも、ACアダプターは付属しない。多くのACアダプターはUSBのType-Aなので、ユーザーによっては困っているかもしれません。

石川氏:ACアダプターを製造する周辺機器メーカーは、製品が売れて嬉しいでしょうね。僕は充電器を2つ買いました(笑)

自社チップをMacが採用した影響は?

房野氏:MacがARMの規格へさらに移行していくと思われますが、iPhoneはどうなっていきますか?

Appleのチップ「M1」が搭載された「MacBook Air」「13インチMacBook Pro」「Mac mini」

石川氏:Macは自社製の「M1」チップを搭載したモデルを増やしていくでしょうが、iPhoneは別の動きをすると思います。「Photoshop」などが人気のAdobe社も、Appleシリコンだからできることをしたいとコメントしているので、そうなるとインテルの立場は厳しくなるかもしれません。

石野氏:ちなみに、A14 Bionicを搭載するiPad Airはかなり速い。4K60フレームの動画編集もサクサクできるし。

iPad Air

法林氏:iPad Airを高性能に振ったのは、良かったのか悪かったのか判断しきれないところがあります。アップルは付加価値の高い製品作りに突っ走りがちなメーカー。でも、その考え方にユーザーがついていけるのかって思うところもある。4Kで動画編集をする人は限られるはず。普通のiPadのほうが、一般ユーザーにとっては使いやすいんじゃないかな。

iPad(第8世代)

石野氏:iPad Proは本当のプロ用って感じなので、一般のユーザーが購入する場合のハイスペックモデルはiPad Airがいいかなって思います。カラーバリエーションも豊富ですし、何より最安モデルなら6万円台で購入できます。2020年に登場した新型のiPad Proがあまり進化しなかったので、iPad AirがiPad Pro寄りの性能に見えているのが混乱の元。

iPad Pro

石川氏:iPadのラインアップで真ん中のクラスにあたるiPad Airが、最先端のチップを搭載するっていう、ねじれ現象が起きている。次のiPad Proの通信は5G規格になるはずで、そこでキッチリとすみ分けするんじゃないかと思っています。

房野氏:今後、iPad ProはMacBookの機能に近づいていくんですかね。

石野氏:チップは共通にするかもしれないけれど、UIでそれぞれの個性を出していく感じですかね。

法林氏:今後はマイクロソフトのSurfaceみたいに、2in1とか外付けキーボードのタイプと、クラムシェルのタイプと、2ラインに分けて販売されるかもしれませんね。

石野氏:iOSとiPadOSのベースは同じで、iPhone向けとiPad向けにアプリが分かれているだけの違いなので、macOSも両機に近づいていくのかなって思います。

法林氏:そこはユーザーのニーズに合わせてなのかな。iPadは動画編集とかが簡単だし、iPad Proの需要は当然あるからね。

房野氏:インテルはCore i3、i5、i7みたいに性能別で分けていますが、アップルはiPhoneやMacのチップに性能差をつけるのでしょうか。

石野氏:これまでもチップはZとかXとかつけて、モデル別に強化しています。

石川氏:アップルは極力、同じ世代では性能を変えないと思います。大量生産してコストを抑えたいはずなんで。

石野氏:たぶん、A14 Z Bionicみたいなのは出るとは思いますけど。GPUを強化して。

法林氏:電話からデスクトップまで、全てを同じアーキテクチャのチップで通すなら、かなりのチャレンジだと思いますし、相応の成果もあるはず。ただ、ARMの天下がどこまで続くのかって疑問はある。Android勢がARMじゃないチップセットを採用するというウワサも出ていますから。

A14 Bionicのチップが、ほぼ独占みたいな形で作れているのは、少なからずファーウェイがHiSilicon製チップセットをTSMCにオーダーできなくなった影響がある。生産ラインに余裕ができたっていう幸運があるでしょうし。

石野氏:TSMC(A14 Bionicを作る半導体製造ファウンダリ)としても、Android陣営で最大の顧客がいなくなるので、アップルに発注してもらわないとって躍起になっているはずですしね。

......続く!

次回は、「iPhone 12」シリーズで得したキャリア、損したキャリアについて話し合う予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘

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