
この冬も、外出自粛が続きそうだ。これからクリスマスやお正月などのイベントが続き、食事を楽しむ機会は多い。しかし、すでに「コロナ太り」に悩まされている人にとっては、美味しいものを楽しみたい気持ちと、やせたい気持ちの板挟み。実は、その両方を叶える食べ方がある。それは「ロカボ食」。今回は「ロカボ」でコロナ太りを対策するための方法を紹介する。
「ロカボ」でダイエットはできる?
ロカボとは、北里研究所病院の糖尿病センターの医師である山田悟先生が提唱する概念で、「ゆるやかな糖質制限」を指す。ゆるやかなというのは、糖質摂取を完全になくすことはないということ。ロカボでは、1日の糖質量を70g~130gに抑えるだけで、ゼロにはしない。正確には1食ごとに糖質を考えるが、後で詳しく解説する。
そもそも、ロカボは糖尿病の制限食の代替えとして登場した新しい食事法だが、糖尿病ではない人が実践しても、スリムや健康を目指すことのできる方法だという。そのため、ロカボはダイエットしたいときにも有効な食事法といえる。
ロカボのダイエットの効果は、山田先生自身が体現している。かつてカロリー制限のダイエット法でリバウンドの失敗をした後、糖質制限の考えに基づきロカボの食事法をはじめた後は、約10kgの減量に成功。それ以後も現在まで約11年間、学生時代の運動部に所属していた頃の体重をキープしているという。また体脂肪は25%あったところ、ロカボを継続している現在では15%程度を保っているそうだ。
ある論文(※)で示されている通り、ロカボは筋肉や骨を削らずに体重を減らすことができるともいう。
※Metabolism 2002,51,864-870
「ロカボ」の大きな特徴
最近では、糖質を制限するダイエット方法を多く見かけるため、混乱しないよう、ロカボのルールを明確に理解しておこう。
まずは、ロカボの大きな特徴からみていこう。
●カロリー制限はしない
ロカボは一切、カロリー制限はしない。糖質さえ控えれば他のものはお腹いっぱい食べられる。タンパク質、脂質はむしろ積極的に摂るのを推奨しており、油脂も控える必要がない。肉、卵、揚げ物など、コレステロールやカロリーが気になるものも食べてOK。気にすることに意味がないからだ。
●適正糖質を楽しみながら摂取する
ロカボでは「適正糖質」を摂ることに大きな特徴がある。摂取していい糖質量は、血糖値を大幅に上昇させない範囲となっている。タンパク質と脂質を十分に楽しむことができ、さらに、工夫をすることで糖質も1食20g~40gは楽しみながら摂取できる。また、それに加えて嗜好品で1日10gの糖質を摂取するようにする。嗜好品がマストアイテムとされているのが特徴だ。
●「カーボラスト」などで食べ方を工夫する
毎回の食事では、糖質を摂取する際に工夫して食べるのを推奨しているのも、ロカボの特徴だ。血糖値の上昇を抑えるためにタンパク質や油脂、食物繊維の豊富な食品を先に食べ、糖質を最後に食べる「カーボラスト」を実践することを推奨している。
このように、ロカボは糖質を制限しつつも、カロリーは減らさず、タンパク質や脂質はお腹いっぱい食べてOK、嗜好品も楽しむべしという方法なので、誰でも継続しやすい有効なダイエット法なのだ。
コロナ太りに悩む人のダイエット方法としても期待ができる。
「ロカボ」を実践するには?
では具体的に、ロカボを実践する方法を見ていこう。
●糖質の摂り方
糖質は1食ごとに次のように摂る。
朝:20g~40g
昼:20g~40g
夜:20g~40g
間食:10g
一日合計70gから130gとなるが、朝食を抜いたからといって昼食で40~80gを摂ってよいというわけではない。あくまでも1食ごとに考える。
●ロカボ食の始め方
普通にご飯やパンなどの主食におかずを食べていた人がロカボを実践するには、まずは1食あたりの主食の量を減らすところからスタートする。ご飯は70gほど、食パンなら6枚切りを1枚にすれば、それで糖質が20~30g。おかずと合わせて糖質40gほどになる。
その際、おかずはたっぷり食べてOK。主食を減らして物足りないと感じる分はおかずの量を増やすとよい。
●ロカボで積極的に摂るべき食品
ではおかずにはどんなものを食べるとよいのか。ロカボで積極的に摂るべき食品は肉、魚、豆腐などの大豆製品、野菜、ナッツ、卵類。
ただし、野菜は芋、かぼちゃ、大豆以外の豆は糖質が多いので注意が必要だ。
また、果物は基本的に糖質が多く、糖質量の表示もないため、主食とトレードオフ、つまり代わりにしたほうがよい。
●低糖質食品をうまく利用しよう
主食を減らすのがちょっときついという場合には、糖質をカットした低糖質パンや低糖質麺などを利用すれば、通常の主食と同等か多い分量を食べることができる。
例えば、ローソンの「ブランパン」は1個あたりの糖質2.2gなので、2個食べても4.4g。最近では1個あたりの糖質8.8gの「ブランのバタースティック」や、1個あたりの糖質9.2gの「ブランのチーズ蒸しケーキ」も出ている。
●間食・スイーツについて
甘いものが食べたくなることもあるだろう。間食は1日糖質10gまでOK。甘みが欲しい場合には、シュガーカットやラカントSなどの低糖質甘味料を上手に活用するのを推奨している。また、主食や果物とトレードオフにすれば、毎食スイーツを楽しむことも可能だ。
●お酒について
ロカボではお酒を制限しない。もともと糖質がゼロのウイスキー、焼酎、ジン、ウォッカなどの蒸留酒はどれだけ飲んでも問題ない。ただし、糖質では問題なくとも、肝機能や尿酸への影響や、二日酔いなどの問題はあり得るので、実際には適量飲酒をお勧めせざるを得ないというところはある。
ワインや日本酒などの醸造酒には糖質が含まれるが、例えば日本酒は1合に8-9g程度なので、主食やスイーツとのトレードオフにすれば1食あたり2合程度は問題はないという。どうしても飲みたい場合には、低糖質や糖質ゼロの発泡酒や日本酒を利用するのも一つの方法だ。
ロカボマーク付きの市販食品の例
ロカボを実践したいが、すべて自炊でまかなうのは大変、というビジネスパーソンは多いだろう。実はロカボを実践する人にとって嬉しい、ロカボマーク付きの市販の食品が多数存在する。きっと、一度や二度は店頭で目にしたことがあるだろう。
ロカボマークは、山田先生が立ち上げた食・楽・健康協会によるもので、ロカボ商品を安心して、1食の糖質20g-40gを計算しながら選び、購入できる機能的なマークだ。
ここで、ロカボマーク付きの商品を3つ紹介する。
1.「糖質0g麺 担々麺風スープ付き」(冷蔵)(紀文食品)
やっぱり麺が食べたい。そんなときに紀文食品の糖質0g麺は重宝する。中でもこの商品は糖質0gのヘルシー麺を、ごま、豆板醤、花椒で香り豊かに仕上げたスープで食べられるもの。糖質は2.9g。麺は0gなので、糖質はスープの分だ。
2.「『SUNAO』リゾット」(江崎グリコ)
アイスやビスケットなどが人気のSUNAOシリーズから、今年10月下旬にリゾットが2種発売。「2種のチーズ&きのこリゾット」と「完熟トマトリゾット」で、どちらもリゾットのお米の一部を国産大麦に置き換えることで、食べごたえはキープしながらも、1食当たりの糖質量を28g以下に抑えている。温めるだけで食べられる手軽さは忙しい人にも適している。
3.「成城石井 ロカボマドレーヌ 3個」(成城石井)
1個あたりの糖質7.1g(※エリスリトールを抜いた糖質)の国産小麦使用のマドレーヌ。糖質が10g以内なので、毎日(あるいは主食替わりなら毎食)1個のおやつとして最適だ。
ロカボは、ゆるやかに糖質を制限するもので、食事を楽しむことを求める方法だ。コロナ太りが気になる場合には、ロカボを楽しみながら行ってみてはいかがだろうか。
【監修】
山田悟先生
北里大学北里研究所病院糖尿病センター長
1970年1月1日生まれ。1994年3月慶應義塾大学医学部卒業。同年4月同・内科学教室入局。1996年5月東京都済生会中央病院、1997年5月東京都国保南多摩病院、1998年5月慶應義塾大学医学部内科学教室腎臓内分泌代謝研究室、2000年1月東京都済生会中央病院、2001年1月慶應義塾大学医学部内科学教室腎臓内分泌代謝研究室、2002年1月北里研究所病院を経て、2007年5月より現職。2013年11月に食・楽・健康協会設立(兼務)。
http://www.shokuraku.or.jp/
【参考文献】
山田悟著「糖質制限の真実」(幻冬舎新書)
山田悟著「カロリー制限の大罪」(幻冬舎新書)
山田悟、山田サラ監修「dancyuダイエット 女のロカボ 男のロカボ」(プレジデント社)
取材・文/石原亜香利
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