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注目される公務員の働き方改革、ジョブ型雇用が公務員に浸透していく可能性

2020.11.22

横並び大国日本は“火事場の馬鹿力”で変わるのか?

今、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うテレワークをきっかけに、欧米式の「ジョブ型雇用」が急速に浸透し始めている。

民間企業のみならず公務員においても注目度は高まっている中、日本型雇用を代表する公務員の働き方がどのような課題を抱え、どのように変化するのかについて、あしたのチームはレポートで発表した。

公務員の優秀人材は安定から成果志向へ

公務員は、大企業とともに日本型雇用システムが継続されている。しかし、そもそも大企業の人事制度はこの2、3年で変わってきている。日本式の「メンバーシップ型雇用」、いわゆる終身雇用を前提とした年功序列型賃金制度と学卒一括採用からの脱却だ。

この日本型雇用システムは約60年間続いてきた。大企業と公務員は安定というバッジとともに憧れの対象であり、特に公務員は、リーマンショック以降は結婚したい職業の上位にいる。こうして、かつての一億総中流社会が構築されていった背景には、公務員と大企業による日本型雇用システムがあった。しかしそれが今、大企業の変革により曲がり角に来ている。

結果、一流大学を出た若手の公務員は、民間企業の同世代がうらやましく見えている、あるいは見えてくる。なぜならここ数年で、民間企業の平均給与が20代においては上昇傾向にあるからだ。これは大企業が脱年功給で、チャンスがあればどんどん出世できるようになっていることも関係している。

しかし公務員は旧態依然としており、結果、民間企業のほうが魅力的に見えている。定額で使い放題という意味で「サブスク公務員」化しているが、大企業でも「サブスク大企業就業者」ともいえる状況にあった。それが大企業も働き方改革となり、相対的に公務員は劣後してきている。2020年6月に当社が自治体職員向けに実施したアンケートにおいても、72%が人事評価制度に満足しておらず、その理由は「評価と報酬の関連性が持てていない」ということにあった。このように、公務員の代表である自治体職員において、評価と報酬は大きなテーマとなっているのだ。

一方、大企業も、公務員の転職市場の受け入れ先にエントリーするようになってきている。その結果、優秀な20代の公務員は日本型雇用システムから脱し、成果型賃金制度の世界に行くというケースが出てきている。パラダイムが変わった。公務員の人事制度が変わらなければ、優秀な人材が採用・定着できない。だからこそ、今変革が迫られているのだ。

公務員の働き方改革に立ちはだかる法律の壁

公務員の人事評価制度に関しては、2014年の法改正にともなって導入された。しかしこれは、報酬制度や賃金制度には踏み込まれず、あくまで目標管理のことを指す。つまり評価自体が賞与連動、基本給連動、といった報酬制度とは関係がない。賃金制度は法律に守られており、現状マイナス査定ができない。これが大きな障壁となっている。

この問題には実例がある。元衆議院議員の中田宏氏がかつて横浜市長だったときに、人事評価制度をまずは基本給に連動しようと提案した。しかし調べた結果、法律によってマイナス査定ができないことがわかった。しかも、格差が出るからやめたほうがいいなど、多くの議会の反発がありうまくいかなった。そこで、法律の範囲内の枠をフル活用し、一定の役職レイヤーに応じて成果型の報酬制度を設けた。その結果、現場の仕事に対する生産性は、一気に上がったのだ。

中田氏に聞けば、生産性を上げるにはモチベーションが必要だと。特にこれからの日本をつくっていく若い人材には官民関係なく、頑張った人が報われる組織にしていかないと、行政は改善されていかないのではと危惧している。

年功序列型賃金制度と学卒一括採用。この日本型雇用は、戦後を経験して焼け野原から高度経済成長期に作られたひとつの社会システムでしかない。長い歴史から見れば、1960年から1990年ごろでのバブル崩壊までの30年間しか通用しなかった物差しとして考えられる。しかし、一方でそれは強烈な成功体験だった。したがって、平成の30年間もこのシステムが運用されていた。年功序列型賃金制度は、一人一人を評価する必要がなく、管理する側の運用が楽なシステムだ。しかし時代は変わり、ついに変革のときが訪れた。

危機的状況にならないと日本は変わらない?

公務員の人事評価制度は法律に守られていると述べたが、アップデートする方法がないわけではない。各自治体の中の人事制度で昇給以外にできることは、たとえば昇進。ポストはある程度限られるが、評価と昇進は関連付けできるはずだ。

中田氏のように、幹部陣から行えば裾野が広がっていくし、まずは昇進から取り組もうということになるだろう。小さなインセンティブを各自治体に醸成していきながら、やがて評価が給与や賞与に反映された成果型制度へとつなげていく方法が現実だ。

大企業の変革はいよいよ狼煙を上げたわけだが、このスピードと公務員に適応されるスピードはニアリーイコールだと考えている。これから大企業における人事評価制度がどこまでスピード感をもって導入されるかをみれば公務員も分かる。大手メーカーやメガバンクを含め、「ジョブ型雇用」が一気に導入検討されている。横並び大国日本では、前例が出た瞬間に「取り残される」危機感が醸成され、スピード感をもって浸透していくだろう。

「ジョブ型雇用」の移行について、当初は最低でも10年、下手をすれば30年かかるかと言われていたが、今回のコロナショックにより急展開し、3年である程度完了すると考えている。そして、不可逆的に「ジョブ型雇用」への移行は進むだろう。なぜなら現在の不安定な状態は、裏を返せば何かを変えようとするタイミングでもあるからだ。危機的状況にならないと、人はなかなか動けない。そして危機の時は“火事場の馬鹿力”とあるように、平常時以上のパワーが発揮される。

転職=負けではなくなる。価値と勝ち方が多様化する時代へ

公務員や大企業が「ジョブ型雇用」へ移行されることは、日本の社会全体でいうと、キャリア選択のチャンスが今より実現できるようになると考えている。転職は後ろめたいことではなく、一芸に秀でたひとつの専門性で勝ち抜いていくことができる社会になる。女性のライフイベントによるキャリアの断絶もなくなっていくだろう。時間や場所の制約がなくなるので、居住地域等に関係なくチャンスがより広がっていくともいえる。

また、教育に対する考え方も変わる。これまでは大学を頂点とした偏差値ピラミッドだったが、緩やかに崩壊する。ゼロ歳児からの幼児教育の考え方から変わるはずだ。これにはAIの登場も関係している。知識のインプットで大企業に入れば安泰だという、人生の成功のマイルストーンが崩れると、一流大学に入ること以外のメリットも見出される。

テレワークで地方の高卒者が専門分野で大成することは容易に考えられる。あるいは、オンラインで中学からプログラムを学び、高校には行かずともスーパーエンジニアになるという事例も出てくるだろう。画一的な集団管理型の人事制度が、偏差値社会や集団的な教育システムを生んでいる。ここに風穴があくことで日本全体にダイバーシティが浸透し、結果的には健全な競争、言うなれば敗者復活が可能になる。だれもが目標に挑戦できる健全な社会が実現する。

強者が富を再分配できる仕組みが長く続いていた世界でいえば、大学名や偏差値で人にふるいをかけ、ひと握りの大企業が優秀人材の雇用を吸収していった時代であり、その成功プロセスは必然だった。100人の枠に10万人の応募があった際、わかりやすい大学名だけを並べて上位だけを選考に進めていけば、優秀人材を獲得できる確率論としては正解だったわけだ。確かに効率的ではありますが、その延長線上にあったものは集団管理。

これは野球のスカウトでいえば、たとえば人気球団は地方大会まで目を配らなくても、甲子園だけ注目していればスター選手に巡り合えるという図式と近いかもしれない。しかし価値が多様化し、勝ち方も多様化した結果、偏差値だけではない教育プロセスが必要になるのだ。

AIの浸透が進むこれからの時代は、情報処理能力だけでは不十分で収入も上げられない。ITの進化で情報編集やクリエイティビティが求められるようになり、教育プログラム全体も変わっていくだろう。しかしこれこそが、満員電車に乗って背広で通勤するという海外から見た典型的な日本人像からの脱却であり、あるべき姿なのではないかと思う。

構成/ino.

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