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【部長のヨワネ】「データ分析の予測精度を上げるには量だけでなく質が重要です」ブレインパッド・紺谷幸弘さん

2020.11.27

前編はこちら

「データサイエンティスト」という言葉をご存じだろうか。重要さを増すビッグデータの分析を担い、様々な意思決定局面において、データをもとに合理的な判断が下せるよう、意思決定者をサポートする職務、それを遂行する人間のことだ。近年、その注目度や関心は高まり、高給が期待できる分野といわれる。

今回の人物は部長職なので、「部長のヨワネ」シリーズの連載ではあるが、データサイエンティストの職務について、多くのボリュームを割く内容となっている。

シリーズ第2回 株式会社ブレインパッドアナリティクス本部、アナリティクスサービス部長 シニアリードデータサイエンティスト 紺谷幸弘さん(38)。事業内容は企業の経営改善を支援するビッグデータ活用サービス。紺谷さんは現在、部長職として100名ほどの部下を監督する。

ネット時代にカタログ通販のオーダー

「データサイエンティストにはビジネスの課題を整理し解決する力。統計学等の情報科学系の知識を理解し使う力。意味のある形に使えるようにし、実装運用できるエンジニアリング力、この3つをこなせる能力が必要」とは、この会社の代表者の言葉だ。

大学院で統計学を専攻した紺谷幸弘が、ベンチャー企業のこの会社を選んだのは、統計の知識が生かせ、いろんな経験ができるだろうと考えたからだ。

前編ではビッグデータの分析の結果、「お客さんがアクションを起こす手前まで連れていく」データサイエンティストとしての成功例を紹介した。だが、いろいろと分析しても結果が出ないこともある。

例えば大手のカタログ通販会社の案件だ。ネット時代にカタログ通販は厳しい環境だが、「うちも、Webでカタログページを展開しているが、そこからの資料請求を増やしてほしい。靴や服など季節の特集を組んでいるが、それについて、関心のあるユーザーの区分けをしてほしい」それが、カタログ通販会社のオーダーだった。さてどうするか。

分析はデータ量ととともに質が重要

ポータルサイトのビッグデータから、カタログ通販会社の衣料品に、反応しやすい人を調べると、“子供服が安い”等の単語がわかってくる。さらに家族の衣服をまとめ買いしているケースを調べると、”買いやすい“等の単語が浮き彫りになる。

炙り出された単語に近いのは何か、データを分析して探る。例えば”ポケモン劇場版“という単語に注目する。親は子供を映画館に連れていくために前売り券を検索する、その映画の前売り券のサイトへの広告の出稿を、カタログ通販会社に助言した。

だが、カタログ通販の利用者は年配者が多い。「年配者は紙のぶ厚いカタログを見ています。Web広告のターゲットは若者層ですが、そもそもWebを使う年配層が少ない」

広告を出しても、その広告がユーザーの目に留まる、リーチが難しい。さらに広告をクリックして、資料請求につなげる、コンバージョンも困難だ。ユーザーを分析し区分けしてWeb広告を試したが、結果に結びついたと言えなかった。

分析はデータ量ととともに質が重要だ。データの量が多く質が良ければ、予測の精度は高くなる。データの量も質も伴わない、ましてやWeb広告を使うユーザーが少なければ、打つ手は難しい。

結局はコミュニケーション能力

――現在、紺谷さんは部長職で、部下として約100人の主にデータサイエンティストを束ねています。もっとも大変なことは何ですか。

「人事評価です。一次評価は26名のグループマネージャーに委譲しますが、その人をさらに知るために、一緒にプロジェクトに携わったメンバーに聞いて回ります」

――それが評価につながるわけですが、どんな点を重点的に聞くのですか。

「顧客とのコミュニケーション、スケジューリング等々です」

――データサイエンティストは独立性の高い仕事ですし、紺谷さんの評価に対して、不満を訴える部下もいるのではないですか。

「数%はいます。でもうちの会社の人事制度は、給与と能力が綿密にヒモづいていて。例えばプロジェクトマネージャーになるには、3人のメンバーを束ね、大きな価値をお客さんに提供できる能力が必要です」

人を束ねて価値を高める――、例えばスーパーへの納品の効率化を進める案件では、様々な人がプロジェクトに係った。データ分析の事業化を促す商社の人、スーパーに商品を卸すグループ会社の人、分析担当のデータサイエンティスト、分析の品質をチェックするレビューの担当。それぞれに意見があり、利害関係も絡んでまとめづらい案件だった。そんなゴチャゴチャした状況の中で、上手く整理と調整した部下がいた。

部下は関係者の話を聞き、お互いの利害関係を踏まえて、認識が違うものを一致するように擦り合わせたり、人の意見を聞き、人に寄り添うようにして状況を整理し仕事を進めた。そのうえで分析に基づき、目に見える形で、発注や在庫管理等のシステムのモデルを作っていった。

宝は良質な“失敗のデータ”

――クールにデータの分析に徹する、それがデータサイエンティストのイメージですが結局、コミュニケーション能力が大切だと。人との意思疎通が問われるわけですね。

「今の僕のポストは仕事の大半が、社内の人間とのコミュニケーションです(笑)」

――私が個人的にデータサイエンティストに期待したいのは、さらに踏み込み、膨大なデータの分析から、新規事業の提案や新商品の開発への提案とか、まったく新しいものの創造です。

「それは難しいな……」

――なぜですか。

「データが偏っている可能性が大きい」

――データの偏りとは?

「企業は成功したデータしか、表に出しませんから。成功の裏にどれだけ失敗があるのか。量と質のいい失敗のデータがあれば、それらを分析することによって、新規事業や新商品の示唆ができる可能性はありますが」

「うまくいった話は聞きたくない。悪い話から始めろ」とは、上司が部下に告げる常とう句だ。”失敗のデータが大切“とは、思わずうなずく逸話ではある。

もっとも価値があるデータとは何か。それは”質のいい失敗のデータ“と、言えるのかもしれない。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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