
新型コロナウイルスが本格流行する前までは、就職活動は対面面接が当たり前。学生たちは暑い日も寒い日もスーツ姿で、内定を勝ち取るために様々な企業へ訪れていたはずだが、今はオンライン面接も浸透しつつある。
今回、株式会社リクルートマネジメントソリューションズは、2021年新卒採用選考に参加した全国の大学4年生、修士2年生 1,407名に対し、「大学生の就職活動調査 2020」を実施。学生の「WEB面接に対する心象」や「WEB面接特有の事象と志望度・企業イメージへの影響」など、調査結果から見える実態について公表した。
2021年卒新卒採用におけるWEB面接の浸透度(図表1・2)
本選考で面接経験のある学生のうち、約81%がWEB面接を経験。1次面接で「WEB面接経験あり」と回答した学生は80%以上。選考が進むにつれ「WEB面接経験あり」と回答する学生の比率は減少するが、最終面接においても「WEB面接経験あり」と回答する学生が60%以上いた。
WEB面接に対する学生の心象(選考段階別)(図表3)
本選考で面接経験のある学生に「WEB面接と対面面接どちらが好ましいか」聞いたところ、1次面接では「対面面接を支持する学生」よりも、「WEB面接を支持する学生」の割合のほうが大きかった。
一方で、3次面接以降は「WEB面接を支持する学生」よりも「対面面接を支持する学生」の割合のほうが大きかった。
⇒選考が進むに従い、対面でのコミュニケーションを好む学生が多くなる傾向が見られる。
【研究員の考察】
選考段階の初期では、学生は面接などの選考プロセスを複数社・同時並行で進めるケースも多く、経済的・時間的な効率を優先する人が多いことが背景にあると考えられます。
一方で、選考の最終段階では対面形式を望む学生が増えています。企業で働くイメージを具体化するためにオフィスや社員の雰囲気も含めて理解したいという声や、最終段階では自分の熱意を対面で直接伝えたいというコメントも見られることから、選考が進むにつれて感覚的に得られる情報も含めて双方の理解を深めようとする意向が感じられます。
WEB面接に対する学生の心象(WEB・対面面接両方経験ありの回答傾向)(図表4 赤枠部分)
経験の有無が面接形式に対する心象に影響を与える可能性があることから、「WEB・対面面接両方経験あり」と回答する学生のWEB面接に対する心象を調査したが、図表3と同じ結果がみられた。
定性コメント(WEB面接のほうが好ましい理由)(図表5)
「WEB面接の方が好ましい理由」として挙げられていることは、「心理的な負担の少なさ」「時間・交通費の節約」「新型コロナウイルス感染症への懸念」の3点にほとんど集約された。
また、「WEB面接の方が好ましい」と回答した学生の中には、「最終面接の段階では対面面接が良い」と回答する人もいた。
<図表5 定性コメント(WEB面接のほうが好ましい理由)>
○心理的側面
・WEB面接は自宅で受けるため、緊張せず、リラックスして臨むことができる
・満員電車に乗って企業に向かったり、移動中のスーツのシワを気にする必要もなく
また面接開始直前まで対策ができ、面接に対してエネルギーを無駄なく注げる
○経済・効率的側面
・移動時間や交通費がかからない
・WEB面接上の方が効率もいい
・複数の企業を同時に受けることができたり、地方の企業の面接を受けたりすることができる
・地方の学生にとっては交通費、宿泊費がかかるため、対面面接は負担が大きい
○社会的側面
・新型コロナウイルス感染症に対する懸念
定性コメント(対面面接のほうが好ましい理由)(図表6)
「対面面接の方が好ましい理由」として挙げられていることは、「コミュニケーションのしやすさ」「会社に対する理解の深まり」の2点にほとんど集約された。
特に「選考の初期段階ではWEB面接でも良いが、最終面接の段階では対面面接が良い」という意見が多く見られた。
<図表6 定性コメント(対面面接のほうが好ましい理由)>
○コミュニケーションのしやすさ
・気持ちや雰囲気、熱意が伝わる
・対面面接の方が話しやすいし得意だから
○会社に対する理解の深まり
・選考が進むにつれ、その企業への志望度も高くなるからこそ、社員の人柄や雰囲気を直に感じたい
・対面面接でないと相手のことをお互いによくわからないと思うので、選考が進むに従って徐々に対面にシフトしていくべきだと思う
・選考の始めの段階では対面面接でなくとも、交通費や移動時間等を考慮すると、企業側も学生側も互いにWEB面接の方が効率的だと思う。しかし、最終面接はやはり双方にミスマッチがないか確認する場面でもあるため、対面面接であった方が良いように思う。
・最後までWEB面接で直接合わないのは不安
WEB面接特有の事象と志望度・企業イメージへの影響(図表7)
「面接官の反応が薄く、話の内容や熱意がきちんと伝わっているか不安になった」という事象が最も志望度・企業イメージにネガティブな影響を与えていることがわかった。
【研究員の考察コメント】
面接形式(WEB・対面)は志望度に影響しないと答えた学生が半数以上であった一方で、WEB面接中のできごとが企業の志望度に影響していることがわかりました。
企業側はWEB面接中に生じる通信不具合への対応や、「自分の話がちゃんと伝わっているのだろうか」といった学生が抱く不安への配慮がしきれず、志望度や企業イメージを下げてしまっていた可能性があります。
また、学生は自分が働くイメージを具体化するための情報を欲する傾向があります。特に就職活動のオンライン化が進む中では、企業は採用活動全体を通して、働くイメージを具体化するための機会や情報提供を意識的に行うことが求められているといえます。
<調査概要>
調査名 :大学生の就職活動調査2020
調査主体:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
調査期間:2020年7月10日~2020年7月13日
調査対象:全国の大学4年生または修士2年生
有効回答者数:1407名
出典元:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
構成/こじへい
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