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Withコロナ時代に必要なのは「束の間の楽しみ」を堪能する能力かもしれない!

2020.11.26

 確かに街の人出は戻ってきている。そしてショッピングや飲食などを楽しむ人々もそれなり増えていることは間違いない。しかしそれはあくまでも3、4ヵ月前に比べればという話ではあるが……。

映画の帰りに初めて南千住で降りる

 仕事に関係してくる映画を観るために千葉県・柏にある映画館を訪れた帰途、JR常磐線を南千住駅で初めて降りた。その目的はもちろん“ちょっと一杯”というものだ。

 一年でも最も日が短い時期であるだけに、街はもうすっかり暗い。駅の西口の正面にある複合ビルの電光看板が早い日没で余計に目立つ。この街もきっと3、4ヵ月前よりは人が戻ってきているのだろう。

 駅の東側の様子がどうなっているのかわからないが、この西口に降り立った印象としては、駅利用客の多くは帰宅してきた一帯の住民の方々のようで、さながら都内のベッドタウンといった感じである。家路に向かう道すがら寄り道できる店はそれほど多くはないようにも思えるが実際はどうなのだろうか。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 マフラーをしてくるべきだったと思えるくらいには今年も師走が意識される季節になったが、はたして来年はどんな年になるのだろうか。そして自分自身、来年をどんな年にしたいと望んでいるのか。

“新年の抱負”というようなものは特に掲げないほうだが、それでも師走や年初になれば新年の展望みたいなものは少しは考えたりもする。しかし今年は“コロナ禍”の混乱もあって、年初にどんなことを考えていたのかもはや覚束ない。それどころか今年の1月、2月をどんな風に過ごしていたのか、そして緊急事態宣言の期間中をどうやって乗り切ったのかもあまりクリアには思い出せない感もある。

 正面のロータリーを前に右に進む。ネットの情報で知った青森県の食材が楽しめる居酒屋が目当てだ。

 来年をどんな年にしたいのか、まだ具体的な考えは浮かんではこないのだが、それなりに幸せを感じつつも大過ない1年を送るには、まずは健康が重要であることは間違いない。体調管理や健康維持について普段それほど意識はしていないほうだが、感染症禍の中では否応なく注意を払わねばならなくなっている。

 来年も健やかに過ごし、免疫力を低下させないためにも節制と摂生に努めなければならないことは言うまでもない。暴飲暴食などもってのほかということになるが、それでも個人的には“ちょっと一杯”はどうしても止められない。もちろん暴飲暴食をするつもりで店に入るわけではないが……。

 緊急事態宣言の期間中は“ちょっと一杯”はもちろん、外食もほとんどしなかったが、そのぶんだけ解除後は外飲みの楽しさが増したように思える。今回のように外食ができなくなる事態を実際に味わってしまえば、外で飲み食いする体験が貴重に感じられてくるというものだ。少なくとも今までは惰性で入っていたような店でも意識的に選んで入り、味わうようになってきている。

 歩き続けると目的の店が見えてきた。なかなか年季の入った木造のこじんまりとした店構えでいわゆる“昭和”感に溢れている。クラシックな居酒屋に相応しい外観だ。さっそく引き戸を開けて中に入らせていただく。

“束の間の楽しみ”は悪でも障害でもない?

 外観と同じく木造で味わいのある店内だ。カウンターがある1階に加えて2階にも席があるようだ。入り口を抜けてすぐの調理場に面したカウンターに案内された。

 着席した目の前には印刷されたメニューが貼られているが、店内の壁には手書きのメニューも数多く貼られている。とりあえず生ビールを注文した。お通しは3種類から選べるということで、モツ煮込みを注文する。

 店内の壁には「本日のオススメ」の手書きの張り紙が貼られている。その筆頭にある「焼きサバのトロロ」を注文。これは“ブランドさば”である「八戸前沖さば」を使ったメニューということだ。加えて刺身の2点盛りもオーダーする。

 青森にはだいぶ前に一度訪れたことはあるが、いかんせん記憶が薄れてきている。もちろん海鮮料理が美味しかったことや、三内丸山遺跡や青函連絡船の八甲田丸を足早に観光したことは憶えている。しかし当時は食に関する造詣が特に浅く、あまりいろんなものは食べられなかったような記憶もある。

 注文したものがいろいろとやって来る。初めて食べる「焼きサバのトロロ」が美味しい。店の人に教わり、木製のスプーンで中央に添えられたワサビを少しづつ混ぜながら食べたのだが、これまでまったく食べたことのない味と食感で個人的にはまさに“珍味”であった。これだけでもこの店に来た甲斐があるというものだ。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 もちろんこれだけで終わらせるつもりもない。これもまた壁に貼られた手書きメニューである「水炊き湯豆腐鍋」を注文。鶏肉に4種類以上の野菜と豆腐、そして青森ならではの南部せいべいが入った鍋で、嬉しいことに1人前もあるのだ。生ビールを飲み干したので今度はチューハイを注文する。

 もちろん“暴飲暴食”をするつもりはないが、いつになく贅沢な外飲みになっていることは確かだ。年末に向けて体調管理には気をつけたいものだが、こうしてたまには贅沢をしてさまざまな楽しみに一時的に惑溺することは決して咎められることではなく、むしろ生活の満足度(well-being)を高める行為であることが、最近の研究からも示されている。

 スイス・チューリッヒ大学とオランダ・ラドバウド大学の合同研究チームが2020年7月に「Personality and Social Psychology Bulletin」で発表した研究では、たとえばソファーでリラックスしたり、美味しい食事を味わったりといった、長期的な目標につながらない“束の間の楽しみ”に浸ることは、少なくとも自制心と同じくらい幸せな生活に貢献していることを報告している。


 私たちは時折、最終ゴールとしてダイエット、砂糖を減らす、外国語を学ぶなど、長期的な目標を設定します。これまでの研究は、これらの目標をより効果的に達成する方法を見つけることに多くの時間を費やしてきました。自制心は瞬間的な喜びよりも長期的な目標を優先するのに役立ち、自制心が優れていれば通常、より幸せでより成功した人生をもたらすという見方が一般的です。

「今こそ再考の時です」とチューリッヒ大学のモチベーショナル心理学の研究者であるカタリーナ・バーネッカーは言います。「もちろん自制心は重要ですが、自制心に関する研究は、快楽主義、または短期間の快楽にも同様に注意を払う必要があります」

 バーネッカーの新しい研究は、喜びや楽しみを体験する人々の能力が、少なくとも成功した自制心と同じくらい幸せで満足のいく人生に貢献することを示しています。

※「University of Zurich」より引用


 研究チームは“束の間の楽しみ”に耽って満足できる能力を測定するためのアンケートを作成した。このアンケートを使用して、さまざまな状況で“束の間の楽しみ”を堪能できる能力に個人差があるのか、そしてこの能力が幸福に関連しているかどうかを調べたのである。

 分析によってこの“束の間の楽しみ”をじゅうぶんに楽しめる人々がいる一方、楽しめない人々がいることもわかった。そして楽しめる人は生活の満足度や人生のコントロール感が高い一方、楽しめない人はそれ故にある意味で人生を損していることが浮き彫りになったのだ。

「水炊き湯豆腐鍋」がやって来た。固形燃料に火をつけたコンロにかけてくれるが、この時点でじゅうぶんに火は通っているということだ。さっそく取り皿によそっていただく。さっぱりしていながらもコクのある出汁が美味しい。お好みで入れるポン酢の出番はなさそうだ。まさに“束の間の楽しみ”を存分に堪能している瞬間だ。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 ダイエットや体力向上、あるいは語学の習得などの長期的な目標を設定すれば、普通に考えれば“束の間の楽しみ”に耽ることは目標達成のための“障害”になる。そして“束の間の楽しみ”を楽しめない人とは、こうした長期的な目標が頭から離れないが故に楽しむことができないのである。“束の間の楽しみ”は障害であり“悪”であると受け止めてしまうのだ。

 しかし今回の研究では、長期的な目標と“束の間の楽しみ”は決して対立するものではないことを指摘している。しかしそこには考え方の転換が必要で、“束の間の楽しみ”は余計なことを案ずることなくどっぷり浸ってしまうことで、生活の満足度が高まり、結果的に長期的な目標も達成しやすくなるというのだ。ならば今のこのひと時、無駄な心配は何もせずにこれらの青森料理にじっくり舌鼓を打つことにしたい。

“束の間の楽しみ”を楽しみ切る能力が求められている

 今回の“コロナ禍”において、決して少なくない数の勤労者が“在宅勤務”を経験することになったが、会社によってはまだ在宅勤務が続いていたり、通勤する日数が減っているケースもある。いずれにしてもこれまでの一般的なサラリーマンが味わうことがなかった勤務形態を余儀なくされたのである。

 そしてこの在宅勤務が精神的な負担となってメンタルの不調を訴える人々も少なからずいるという。これまでは休息の場であった自宅が“職場”になることで、公私の区別があいまいになり、常に仕事を気にかけることで“心が休まらない”状態になりストレスを感じるのである。

 したがってこの“withコロナ”の時代であるからこそ“束の間の楽しみ”を楽しみ切る能力が求められているのだともいえる。日常の生活の中で仕事という長期的な目標と私生活を意識的に区別し、“束の間の楽しみ”を思う存分に楽しむことがメンタルの健康のためにも求められているのだろう。

 湯豆腐は美味しくて食べ応えがあったが、こんなことを考えていると何だか食欲が増してきてしまった。ありがたいことにカウンターの1人客のみが注文できるという1人前の「十和田バラ焼き」をこの際だからと追加注文する。これはご当地B級グルメグランプリで王者に輝いたことがあると手書きメニューに記されていた。

 ともあれ映画館で映画を観る楽しみが戻ってきたのは喜ばしい限りだ。今日行った映画館もそれなりの入場客で賑わっていて思わず安心してしまった。映画館は確かに密室ではあるが換気も行われていて、基本的には静かに観る(インド映画は除く!?)ものなのでコロナのリスクはかなり低いのではないだろうか。そしてコロナ禍においても映画館に入ることで日常からいったん切り離されて、“束の間を楽しみ”を満喫することができる。

「十和田バラ焼き」が運ばれてくる。食べる前から見ただけで絶対に美味しいことがわかるビジュアルだ。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 文句なしで美味しい。チューハイの次はレモンサワーを注文して、チビリチビリと飲みながらバラ焼きをいただくことにした。食べ終わるまでの間、これ以上はあまり考えを巡らせることなく“束の間の楽しみ”をじっくり味わうことにしよう……。

文/仲田しんじ

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