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天才棋士・藤井聡太に学ぶ「AIに負けない力」

2020.11.13

今や多くの職業がAI(人工知能)に代替され始めている。将棋もその例に漏れず、「人間はAIに勝てない」と語られて久しい。そんな中で、稀代の天才棋士・藤井聡太は、むしろAIを乗りこなしている。11/16発売のDIME1月号ではそんな『藤井聡太に学ぶ「AIに負けない力」』と題し、彼の強さを分析。人間がコンピューターに負けないための哲学が詰まっている。

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AIだけが予想できた藤井聡太の「1500万円妙手」

 1500万円――。一片の紙とそれを入れてあった封筒に、チャリティーオークションで途方もない値がつけられた。「封じ手」と呼ばれるその紙には、黒い字で将棋の図面が記されている。その上に赤い線で「飛」の駒に丸がされ、「銀」の駒があるところに矢印がつけられている。その下には赤い字で「△8七同飛成」と書かれていた。

 なぜ、この紙片に1500万円もの価値があるのか。それは現代を代表する若き天才・藤井聡太二冠(18歳)が歴史的な一局において、歴史的な指し手を自らの手で選んだ証拠となるからだろう。

AIを駆使して棋譜を研究し、羽生善治竜王(当時)を打ち破った(2018年2月、朝日杯)。

 2020年8月に行なわれた8大タイトル戦のひとつ「王位戦」の七番勝負で藤井は、「受け師」の異名を持ち、守備のうまさにかけては随一のベテラン木村一基王位(47歳)に挑んだ。木村を相手に、藤井は3連勝。あと1勝で王位を獲得するという一番を迎えた。

 王位戦の各対局は2日間にわたって行なわれる。1日目が終わる夕方には公平を期する(一方が一晩中考えるのを防ぐ)ため、中断時に手番となった側が次の手を紙に記して封筒に入れ、立会人に預ける。それが封じ手だ。

 通常、封じ手は無難な手であることが多いが、藤井が記した一手は違った。「△8七同飛成」は、盤上で最も戦力の高い飛車を、価値の低い銀と刺し違えてしまう、常識はずれの手のように思えた。

 だが、藤井は常識の上をいった。終わってみれば藤井の完勝。4連勝のストレートで七番勝負を制した。

 実は、藤井の「△8七同飛成」は全く予想されていなかったわけではない。人間の常識では選びづらいその一手を、候補手(最善手)としてあげていたのは、この勝負を生中継していた動画配信サービス「ABEMA」が開発した「SHOGI AI」だった。

 AIの実力は現在、人間をはるかに凌駕している。もし、将棋の真理を「神」と表現するのならば、AIは人間よりも神に近いところにいる。

 今や、AIが最善と示す形を人間が取り入れることで、旧来の常識、定跡が覆されるのは珍しいことではなくなった。藤井も、現代の最強コンピューター将棋ソフト「水匠」を自作したPCにインストールし、棋譜を分析させて自身の将棋の参考にしているという。

1500万円で落札された藤井聡太の「封じ手」
第61期王位戦第4局での藤井聡太の封じ手を、日本将棋連盟が『ヤフオク!』に出品。1500万円で落札され、売り上げは7月の九州豪雨の被災地のために寄付された。

藤井だけじゃない〝AIネイティブ〟世代

 藤井をはじめ多くの若手棋士が、棋譜の分析にAIを取り入れている。勝率8割を超す圧倒的な成績の藤井に対して、これまで公式戦6勝0敗という驚異の戦績をあげている豊島将之二冠(30歳)も、そのひとりだ。

 豊島は2014年、23歳の時に、5人の人間と5種類のAIが対局する団体戦「電王戦」に出場した。すでにAIが人間の実力を超していることは明白になりつつあったこの時に、豊島はソフトの癖を徹底的に解析することで、唯一人間チームに勝利をもたらした。

 豊島はこの対局を棋士人生の転機と位置づけており、以後、AIを使った研究をメインに行なうようになった。2018年には、豊島は絶対王者の羽生善治(50歳)から初タイトル「棋聖」を獲得する。現在までに獲得したタイトルは5つ。同じくAIを使いこなす藤井とは、この先も数々の名勝負を繰り広げていくことだろう。

 将棋のAIは現在、ほぼ誰もが利用できる。藤井が導入している最強ソフト「水匠」であっても、ネット上で無料でダウンロードできる。

 もし、将棋が弱い人が、ありとあらゆる変化をAIで研究し尽くし、その結果を暗記すれば、誰が相手でも勝てるということになるだろう。だが、現実にはそれは不可能だ。将棋を調べ尽くそうとするには、人生という持ち時間はあまりに短い。

 寓話のようなエピソードがある。昭和の昔、ある人がひとりの名棋士に頼んだ。一手一手、最善手を書き尽くした「虎の巻」を書いてほしいと。名棋士は答えて言った。もし、それだけの本を作ろうとしたら、丸ビル5つ分ほどの図書館を造り、その本棚にびっしりと並べる必要がある、と。これは将棋が持つ途方もない盤面変化の可能性を端的に示したものだ。

 将棋はわずか一手の違いで大きく分岐していく。どれだけAIで研究しようとも、人間の時間は有限だから実戦で現われるすべての変化をカバーできるわけではない。そこでものをいうのは、やはり各人の実力である。藤井や豊島の活躍が目立ってはいるが、現在トップを争っているのは、AIが今ほど台頭していない時期から強い棋士たちばかりだ。渡辺明名人(36)、豊島二冠、永瀬拓矢王座(28歳)、それに羽生九段といった年上の棋士たちもやはり強い。

 さらには藤井より年下の棋士たちも今後は手強い相手となっていくだろう。2020年10月、藤井と同じ18歳で、誕生月が藤井よりも後の伊藤匠が最年少棋士となった。伊藤は小学3年の時、全国大会で藤井に対し勝利をあげている。また関西奨励会では12歳、小学6年の山下数毅が初段となった。これは豊島や藤井らと遜色のないペースだ。山下は、父の山下剛(数学者)とともに2019年、世界コンピュータ将棋選手権の会場を訪れ、AI同士の戦いを観戦していた。

 こうした“AIネイティブ世代”ともいえる若者たちは将来、どのような将棋を見せてくれるのだろうか。

この続きは11/16発売の雑誌DIMEで掲載中。是非チェックしてみてください!

取材・文/松本博文氏


将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東京大学将棋部出身。著書に『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)など。

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文/DIME編集部

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