人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

政府の思惑通りに進んだ4兆円規模のドコモ完全子会社化、NTTは今後どう変わるのか?

2020.11.01

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回はNTTによるドコモの完全子会社化は国際競争力を増すか? という問題について議論します。

※新型コロナウイルス対策を行っております

4兆円規模のTOB

房野氏:NTTグループの持ち株会社である日本電信電話(NTT)が、ドコモに対してTOB(株式公開買い付け)を行い、ドコモを完全子会社化すると発表しました。TOB価格は1株当たり3900円で、4兆円規模のTOBになるとされています。今回のTOBの原資はどこから出るのですか?

房野氏

石野氏:銀行ですね。

石野氏

法林氏:借金ですよ。今は金利が安いから、NTTだったら4兆円くらい借りられるでしょうね。

法林氏

石野氏:融資する銀行の体制(三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、農林中央金庫、三井住友信託銀行、日本政策投資銀行から総額4兆3000億円の範囲で借り入れを行う)を見ていると、「日本」としてやるんですねという印象です。

法林氏:だから説明が必要だという話なんですよ。国の方針として、NTTを強化して世界と戦っていくなら、管轄の武田総務大臣が出てきて話すべき。そうじゃなかったら菅総理大臣が話すべき。話せないなら手を出すなってことですよ。だってNTTは民間企業なんだから。財務大臣がNTTの株の約35%持っているとはいえ、残りの65%は他の人が持っているわけだから。それを考えたら、こんなやり方は絶対ダメですよ。

武田良太総務大臣

石野氏:明らかに最初から政府の了解がとれていた感じがしますね。

法林氏:多分そうだと思う。

石川氏:携帯電話料金の値下げをしたい官邸の思惑と、国際競争力を付けるために再編したいNTTの思惑が、どこかのタイミングで互いにメリットが合致することになって、渡りに船で話が進んだんだろうなと思うんです。

石川氏

法林氏:NTTグループのグローバル持株会社NTT, Inc.が2019年から複数年契約で、アメリカのインディカー・シリーズの冠スポンサーとインディカーの公式テクノロジーパートナーになっています。AT&Tじゃなくて、NTTですよ。佐藤琢磨が2度もインディ500を制した、アメリカを代表するインディカーですよ。

その一件が象徴するように、NTTは海外事業に力を入れていこうとしている。そのためにNTTコミュニケーションズ(NTT Com)の力だけでは足りないから、グループ内の海外で活躍できる人材が欲しいということもあるだろうし、そのためにはドコモの持っている5Gや次世代の基礎技術が必要……ということはわかるんだけど、それを国の方針としてやるなら、武田総務大臣がきちんと説明するべきじゃないかな。

石川氏:今後、携帯電話料金を値下げすることで起こりそうなのは、キャリアショップが減ること。NTTグループ内でリストラがあるかもしれないけど、その前段階として、キャリアショップは厳しくなっていくと思います。

法林氏:最悪の場合、キャリアショップが都道府県に1つしかない、みたいなことになるかもしれない。

石川氏:もし北海道でキャリアショップが1つなくなると、他店舗は数百キロ移動しないとない、みたいなところももあるらしいですね。政府は5Gで地方創生だと言っていますけど、キャリアショップがなくなったら、ユーザーが5Gスマホに乗り換えてくれなくなってしまう可能性もあり、結果として地方創生は進まなくなるでしょうし、デジタルトランスフォーメーションなんて夢物語になってしまう。

TOBできない可能性もある?

石川氏:ドコモの新社長になる井伊さん(井伊基之氏)って、5Gは基地局シェアリングでいいという考えなんだそうです。なので、これから5Gを普及させていく上で基地局共有を進めて、エリアの差がどんどんなくなっていくんだろうなという気がします。

房野氏:基地局共有でいいというのは……

石川氏:無駄だから、ということだと思います。今までのキャリアの考えは、通信エリアで差を付けていくというもの。「ドコモはどこでもつながる」ということを重視していたけど、井伊さんは「みんなで一緒に作ればいいじゃん」という考え方らしいです。

房野氏:合理的といえるかもしれませんが、民間企業っぽくはないですね。

法林氏:「みんなで基地局を共用してやりましょう」というなら、国がKDDIとソフトバンクの株を買えという話。10%ずつでもいいですよ。株主として値下げ要望をすればいい。でもそうじゃない。ソフトバンクは言うに及ばず、KDDIはKDDの持っていた資本を郵政共済組合から全部買い取っている。民間企業なんですよ。ドコモはTOBが上手くいけば完全子会社化されるけど、TOBがうまく行かない可能性も残っている。

房野氏:えっ、そうなんですか?

法林氏:わからないですよ。3900円で売らないという人もいるわけだから。

石野氏:今までのドコモのやり方を信じるって人もいるはず(笑)

房野氏:NTTよりもドコモだと。

法林氏:TOBができないケースもあり得る。今回の話に関して、公取委は一応大丈夫というようなことを言っているけれど、色々な通信事業者が「こんなことは許しません」という声明を出したりして、公取委が「調査します」となった場合にはどうするのかってことになる。TOBができなくなると、このシナリオは全部崩壊するわけですよ。TOBが成立しない限りはダメなんですよ。

石川氏:明るい未来が描けないですよね。目先の料金値下げにみんな惑わされている。通信業界や日本の産業の将来を考えたら……まぁ、これで世界から何周も遅れるだろうし、そうなると国際競争力が落ちるし。

法林氏:海外進出するために云々みたいな話は、ソリューションではあるかもしれないけど、インフラでは意味があるかどうか。だったらNTT Comをもうちょっと大きくすることを考えた方がいいんじゃないかと思う。

完全子会社化は春には決まっていた!?

石野氏:なんというか……自分自身のやる気が失せているというか。この10数年間、見てきたのはなんだったのかという気がしていて。

法林氏:そうだよね。ちょっとむなしい。

石川氏:ドコモが終わっちゃった感じがするというか。

法林氏:ただまぁ、吉澤社長の3年間が残念ながらいい結果ではなかった。

株式会社NTTドコモ 代表取締役社長 吉澤 和弘氏

石川氏:でも、それは料金値下げに応じたからじゃないですか。吉澤さんのせいかといったら、それは違う気がする。NTTの澤田さん(NTT 代表取締役社長 澤田 純氏)は、今年の4月、ドコモが営業利益で3番手になったから完全子会社化を検討したと言っていましたが、ソフトバンクもKDDIも、分離プランに変えた時点で1度業績が下がっているじゃないですか。ユーザーに新しい料金プランへ変えてもらうとARPUが上がってくるので、ドコモもこの先1、2年で上がってくるはずなんですよね。5Gも始まるし。

法林氏:ドコモは「月々サポート」(端末ごとに設定されている購入補助)がなくなってから、まだ1年4か月くらい。来年夏くらいには月々サポートが全部終わるので、そうすると業績はガラッと変わるはず。KDDIの業績が良くなっているのも、基本的に分離プランが浸透したから。

去年から続いている伏線が、全部回収された。もっと遡ると、恐らく2018年の菅さんの「4割下げられる余地がある」発言の頃からNTT再編のシナリオが描かれていたんじゃないだろうかって思います。

石川氏:菅さんが自民党総裁選に立候補しているときに、値下げしろと言ったのも、たぶんこの伏線があったからでしょう。

石野氏:そうですね。菅さんが総理になったからじゃなくて、先々を見通せていたからこその発言だったと思いますね。

石川氏:4月頃から完全子会社化を検討し始めたって澤田さんが言っていたから、6月のドコモの人事はもう決まっていたんですよ。

石野氏:安部総理のままだったとしても、こうなったと思う。

法林氏:官房長官として話は進めただろうね。

......続く!

次回は、楽天モバイルの5G対応について話し合う予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘

新型コロナウイルス対策、在宅ライフを改善するヒントはこちら

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2021年2月16日 発売

DIME最新号の特別付録は「LEDリングライト」!特集は「無印良品/ニトリ/イケア ベストバイ」&「テレワークに使えるベストPC選手権」

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 10401024号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。