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ポーラ・及川美紀社長に聞く新しい働き方「女性管理職は自分の可能性を信じてほしい」

2020.10.28

 ポーラ・及川美紀社長のインタビュー後編。前編では社長に就任してから実感したことや「サスティナビリティ方針」で最重要課題と認識しているジェンダーギャップの解消になどについて語ってもらったが、後編ではこれからの化粧品のあり方、ものづくりの姿勢、働く女性へのアドバイスなどについて伺った。

及川美紀(おいかわ みき)ポーラ 代表取締役社長

1969年生まれ。東京女子大学文理学部英米文学科卒業。1991年、ポーラ化粧品本舗(現ポーラ)入社。埼玉エリアマネージャー、商品企画部長を経て、2012年に執行役員商品企画・宣伝担当就任。2014年、取締役に就任し、商品企画・宣伝担当、事業本部担当などを歴任。2020年1月より現職。

がんであることを気軽に相談、カミングアウトできる社内風土をつくる

--SDGsの中で、ジェンダーなどの「壁」の解消の次に掲げたのが健康ですが、これはなぜですか?

 健康を害していて思いきり働けない人は社会的弱者だからです。中でも罹患者が多いがんにクローズアップしました。がん患者はジェンダーに次ぐマジョリティー。2029年までにがん罹患による退職者をゼロにする目標を掲げました。

 ポーラでは2018年に、がんと共に生きるためのサポートプログラムをつくり、がんであっても働くことを希望する人たちが安心して働けるサポートプログラムを用意しています。

「サスティナビリティ方針」では化粧品メーカーらしく容姿の変化をサポートするアピアランスケアへの理解を深めることも盛り込み、がんに罹患しても快適に生きていけることを目指します。

--がんのため、やむなく退職される方はらっしゃるのですか?

 がんと共に生きるためのサポートプログラムをつくったことで、がんになったから会社を辞めることはなくなりました。ポーラでは、がんに関して相談に乗れるネットワークをつくり、イントラネット上では「私もがんです」「私は白血病でした」「胃がんでした」「乳がんと子宮がんを一緒にやりました」といった社員のがん経験が公開されています。

 がんで悩んでいる社員は勇気がもらえ、希望が持てるそうです。会社もがんに慣れているところがあり、社員ががんで入院することになったら励ましています。

--がんで辛い経験や思いをした人が社内にいることがわかると、社員は心強いはずです。

 組織には必ず、がん患者がいます。いないと思っていても、それは本人が話していないだけです。

 私は2006年に管理職になったのですが、直属のチームにがん罹患者がいないのは社長になってからが初めてです。仕事ができないときは有給を取得したり休職すればいいこと。ポーラでは2年間の休職が認められています。そういう意味では、自分のペースで働きたい、休みたい、と意思表示してくれることは、マネジメントする立場からすると楽。その前提として、社員には働き方を自分で設計してほしいです。

--社員が自ら働き方を設計し示せるようになるために必要なことは何でしょうか?

 会社が心理的安全性を担保することです。これがないと、がんになったことは言いづらいはずです。ダイバーシティや育休でもそうですが、気軽に相談できたり言い出せる社内風土はすごく大事なこと。SDGsは社会に対しての宣言であると同時に、社員たちが働きやすい環境をつくる上で大事なことだと思っています。

 ただ、社員ががんになったことをカミングアウトすることが珍しくないポーラでも、グループの健康管理センターに確認すると、がんに罹患したことが言えてない人がいます。職種や立場によっては壁があって言いづらいところがあるので、がんであることを公表しやすい環境づくりが求められています。

人間は健康なときほど、自分の健康を過信する

--ビジネスパートナーの健康診断受診率を80%に上げることも目標に掲げていますが、きちんと健康診断を受診されていない方が多いのでしょうか?

 会社で実施する健康診断ではなく市町村で実施する健康診断などを受診しているのかもしれませんが、ビジネスパートナーのがん罹患の話は社員のそれよりよく聞くんです。

 がんは早期発見・早期治療ができれば、早期の仕事復帰が可能で、経済的なビハインドもありません。私も、がん検診で引っかかったことがありますが、がんになる一歩手前のような状態で切れば治るものでしたから、2泊3日の入院で済みました。がん患者のサポートも大事ですが、もっと大事なことは早期発見。私もそうでしたが、人間は健康なときほど自分の健康を過信してしまいます。

--個人事業主であるビジネスパートナーの健康にまで気を配っているのには驚きました。

 早めに健康診断を受診して、がんをはじめとした病気が見つかったらすぐ治療し早期に仕事復帰することは、社会と楽しくかかわるという意味で大事です。

--個人事業主であるビジネスパートナーには定年がないですから、健康な限り何歳でも働け、社会とかかわりが持てますね。

 中には100歳のビューティーディレクターの方もいるんですよ。2019年に、最高齢のビューティーアドバイザーとしてギネスに認定されましたが、現在でもお客様と電話で美容の話をしながらしっかり売上も上げています。

お客様と楽しい会話をして100歳でも美容の話ができ、メイクもバッチリします。言われなければ100歳とは思わないほど。日本中がそんなシニアばかりになったら、すごい楽しくないですか?

100歳のビューティーディレクター・福原キクヱさん。

--明るい社会になりそうですよね。

 こんな方がいるということを世の中に発信することで、皆が元気になれると思っています。世間では「年を取ったから化粧なんて……」と言いますけど、そんなことはありません。キレイで明るいお婆ちゃんの存在は嬉しいもの。高齢化が進む日本ではこれから、そんな方たちを増やすことからサスティナブルなことがもっとできるのではと考えています。

人の可能性を信じているからこそ、挑戦するブランドでありたい

--話は変わりますが、7月にポーラのトップブランド『B.A』のリニューアルが発表されました。最新の研究成果を生かした先進的な化粧品という印象を受けましたが、化粧品はこれから、どう変貌していくとお考えでしょうか?

 大きな理想は、人の可能性を広げることです。ポーラは人の可能性を信じている会社で、『B.A』のコンセプトも「人の可能性は広がる」としています。悩みの解消はもちろんですが、まだ気づいていない魅力に気づき自信が持てるよう、心と体の両方に本質的に効く化粧品をつくっていきたいです。

--『B.A』のリニューアルでは遺伝子研究の成果を生かしたそうですが?

 ゴミだと思われていたジャンクDNAの中から肌に関連するものを探したら、ここで生み出される「LINC(リンク)00942」を発見し、その効果を生かしました。「LINC00942」はエピゲノム(遺伝子の発現状態が後天的に変わる仕組み)を調節し、繊維芽細胞を中心とした肌に関わる遺伝子のスイッチを、後天的に一斉にスイッチをONにするカギであることや、増えるとハリを目指す細胞間のネットワークが拡張し、ハリのある肌が生み出されることが期待されることなどがわかっています。

7月にリニューアルが発表されたポーラのトップブランド『B.A』。左からクレンジングクリーム(10月2日発売)、ウォッシュ(同)、ローション(9月11日発売)、ミルク(10月2日発売)、クリーム(同)

--リニューアルの反応はいかがですか?

 お陰様で、「この時期によくやるね」「ポーラさん強気ですね」なんて言われました。でも、新型コロナウイルスによる外出自粛などで閉塞感に満ちた今だからこそやっぱり、『B.A』みたいな本物の商品が必要だと思っています。それに、「可能性は広がる」というメッセージをどうしても出したかった。女性たちが美を求める心は不変だと信じています。

 こういうときに発売するのは挑戦。新型コロナウイルスのこともあり販売状況は厳しく、お客様は来ないし、インバウンド需要はなくなりましたが、「B.A ローション」は発売から1ヵ月で8.5万個を売上げ、本物を求める多くの方に支持されています。

--「人の可能性を広げる」というのは、『B.A』に限らず貴社の他のブランドにも共通する考え方でしょうか?

 そうですが『B.A』は誕生から35年間、可能性を追究してきたという歴史があり、特に今回は象徴的なところがあります。遺伝子の中でもジャンクなものに目を向けるというのは、可能性への挑戦にほかなりません。ポーラは挑戦するブランドでありたいなと思っています。

「前を進みたい」と願う人と一緒に頑張る

--「挑戦するブランド」と仰いましたが、『リンクルショット』も「挑戦」という言葉がふさわしいです。

 あれはまさに「挑戦」というコンセプトから生まれたもの。2017年に発売した『リンクルショット メディカル セラム』は日本初のシワを改善する薬用化粧品というだけでなく、容器が金色のキャップに紺色のチューブ、商品名がオレンジ色と、化粧品のパッケージでは今まで使われなかった色合いにしました。

 この色合いは宇宙や宇宙服からイメージしたもの。冗談みたいな話ですが、ポーラの面白いところは、こういうことを大まじめにやるところです。ほかにも、薬用美白化粧品の『ホワイトショット』は、何か違和感を感じることで新しい気づきや発想が生まれるということから、白地に小さな赤いを施したパッケージを採用したほどです。

ちなみにこの3月に発売した『B.A ライト セレクター』も、「挑戦」から生まれました。

 

2017年1月に発売された『リンクルショット メディカル セラム』。日本初のシワを改善する薬用化粧品(医薬部外品)で、シワ発生のメカニズムの研究から始めて開発。誕生までに15年の歳月を要した。

そして2021年1月、新処方により立体的に肌が再生し、シワ改善率が1か月で約2倍となった新『リンクルショット メディカル セラム』がリニューアル発売決定!チューブをブルーから、宇宙飛行士が出発するときに着用する宇宙服の色からインスピレーションを得て全面チャレンジングオレンジに変更した。宇宙へ飛び立つのは数人だが、それを成し遂げるには精鋭のメンバーが一丸のチームとなって何年も準備をする、そのチームの力があってこそという思いを込めてこの色にしたのだそう。

--『B.A ライト セレクター』は紫外線や近赤外線から肌を守り肌によい赤色光は透過するそうですが、どういう発想から生まれたのですか?

『B.A ライト セレクター』の発想の源は、「太陽の光を必要以上に怖がりすぎて全部隠す必要はない」。日焼けしないために夏に黒づくめの格好で日傘をさしたら、女性の美しさが外に見えなくなります。女性に美しくあってほしいと思うのであれば、日傘はいいけど肌を堂々と見せようよ、ということがやりたかったんです。

 新型コロナウイルスにより社会が外出自粛ムードになっている中で発売したので、「今出してどうする」と言われたこともあります。わかってくださるお客様は必ずいると信じて発売しましたが、売れ行きは好調でした。

2020年3月に発売された『B.A ライト セレクター』。紫外線と近赤外線から肌を守り、肌に良いとされる赤色光は透過。皮下に存在するRC構造を強化し、肌のハリと弾力を生む。RCとは肌を支える極太の線維束のことで、たるみのない立体的な顔立ちのカギになるもの。

--社会が沈みがちな雰囲気のときに、何かしら明るいメッセージを出すことは必要なことかもしれません。

 そうなんです。厳しいときでも前を向いている人は元気で強いもの。ポーラとしては「前を進みたい」と願う人と一緒に頑張りたいと思っています。

女性管理職は自分で自分の可能性を信じてほしい

--及川社長は働く女性にとってロールモデルのような存在だと思います。これまでの経験などから、女性が仕事を続けていく上でアドバスできることがあれば教えていただけますでしょうか。

 女性は育児や子育てなど自分の意思だけではどうにもならないことがあったりしますが、自分がどうしたいかを家族や周囲の人たちに伝えていくことが大事だと思います。「働きたい」などと、自分で言語化しないと周りの人たちは気づいてくれません。はっきり言葉にした方がいいです。

 管理職になる女性も今後増えていくと思われますが、自分の可能性にフタをしないでほしいです。弊社の女性にわかりやすいほど見られるのですが、管理職が自己評価すると、女性管理職の自己評価は部下評価より低いです。役員でさえもそう。男性は逆で、自己評価の方が高いんです。

--なぜ女性管理職は自己評価が低いのですか?

 自分の理想と比べてしまうからです。男性は周囲の誰かと比べて「まだ自分のほうがマシ」みたいな感じで自己評価しますが、女性は自分が設定したゴールに足りない部分で自己評価してしまうところがあります。

 自分の理想と比べるということは高いゴール設定を持っているということ。それはいいことなのですが、理想に押しつぶされないでほしいのです。ポーラではよく抜擢人事を行なうのですが、それはその人の可能性を評価してのこと。理想や志、今までのチームマメジメントを見ていて「できる」と思うと管理職に抜擢します。

 抜擢があれば降格もありますが、抜擢されたらチャレンジしてほしいし、そのためには自分で自分の可能性を信じていなきゃダメだと思っています。

 それから、周囲の人は「あなたには可能性がある」と言ってあげてほしいです。他人から肯定されないと自己肯定感が生まれないからです。

 女性は自己肯定感が低いところがあります。これはおそらく、褒められてこなかったからです。頑張っている人には頑張っていることと可能性を、周囲の人が認めてあげてほしいです。

ポストは結果ではなく志についてくる

--及川社長ご自身は、管理職時代の自己評価はどうでしたか?

 私も低かったです。課長から事業所の責任者である部長職への話があったとき、「私で大丈夫ですか?」って聞いてしまったたほど。ただ、あるときから開き直ることにしました。

--何がきっかけで開き直ったのですか?

 私の中で目標ができたことでした。その目標とは、ポーラのブランド価値を上げることです。

 私は長いこと埼玉の事業所にいましたが、売場を見ていてPRの仕方、商品の見せ方、教育の仕方はもう少しやりようがあると思っていて、「ブランド価値はもっと上げられる」と感じていました。

 しかし、埼玉にいてはポーラのブランド価値を上げることはできず、会議で本社に行くといろいろ生意気な意見をしていたら商品企画部長の話があり、17年ぶりに本社に戻ることになったんです。文句を言っていたわけですから「私にできるでしょうか?」とは言えません。志と目的ができると、NOと言えなくなるものです。

--やりたいことのために声をあげると新しいポストがついてくることは、肝に銘じておきたいことかもしれません。

 ポストは結果についてくるものではなく、志についてくるものです。未来に向かって想いを馳せている人のところでないと、ポストはやって来ないのです。

 私も課長職試験のときまで、ポストは頑張った対価だと思っていましたが、これは誤解でした。当時は自分の中では頑張った実感はあったのですが、先のことがあまりきちんと描けていませんでした。先のことが描けるようになると、ポストに対する怖さがなくなってきて、やりたいことが増えてきます。

--ただ繰り返しになりますが、日本ではジェンダーギャップがあります。女性にやりたいことがあっても機会に恵まれてないところがあるので、ジェンダーギャップの解消が急がれますね。

 日本の社会はまだまだ、女性の可能性を信じきれていないところがあります。女性には可能性を発揮する機会が与えられていない。これがジェンダーギャップ121位であることの悲しいところです。

 出産のように女性にしかできないことは抗えることではありません。でも、そういうことがあってもチャンスがもらえる社会をつくることは、これから大事になると思います。

取材・文/大沢裕司
撮影/深山徳幸

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