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ポーラ・及川美紀社長特別インタビュー「ポーラにはジェンダーギャップを解消するDNAがあります」

2020.10.27

 新型コロナウイルスの影響で化粧品の売れ行きが伸び悩んでいる。そのような中にあって活発な動きを見せているのがポーラである。革新的な商品の投入やトップブランドのリニューアル実施、さらには創業100周年に向けて「サスティナビリティ方針」も発表した。

 そんな同社を率いるのが、今年1月に就任したばかりの及川美紀社長だ。@DIMEではこのほど、及川社長の単独インタビューを実施。就任早々新型コロナウイルスに直面し、難しい経営の舵取りを迫られている及川社長に、社長就任以降のあれこれを伺った。今回の前編と後編の2回に分けて紹介する。

及川美紀(おいかわ みき)ポーラ 代表取締役社長

1969年生まれ。東京女子大学文理学部英米文学科卒業。1991年、ポーラ化粧品本舗(現ポーラ)入社。埼玉エリアマネージャー、商品企画部長を経て、2012年に執行役員商品企画・宣伝担当就任。2014年、取締役に就任し、商品企画・宣伝担当、事業本部担当などを歴任。2020年1月より現職。

ポーラのあるべき姿を自分で考えてつくる

--今年1月に社長に就任しましたが、社長の内示を受けたときは何を思いましたか?

 言葉を選ばずに言うと「気乗りしなかった」というのが本音でした。もっと現場で仕事していたかったので、社長になることなどイメージしたことはなく、どちらかというと「どうしよう…」「私ですか?」と思っていました。

--社長の内示は予期できなかった、と?

 思いもしなかったです。内示があったのは、担当事業の業績が思うように上がらず厳しかったとき。そのことで「責任を果たせ」「どうするんだ」などと言われ、頭がいっぱいだった頃でした。そんなときに社長の内示ですから「今か?」と思いました。

 とはいえ、経営の中にいましたので、役割として与えられたのであれば全うしなければいけない、と冷静に受け止めました。指名されたということはおそらく、期待されている役割があるのだろうと思います。しかし誰も、私を社長に指名した理由や私のいいところ、期待していることなど、何も言わないんです。

--何も言わないのは意外です。

 前社長の横手から最初に言われたのは「よろしくね」の一言だけです。他社ではどうなのかわかりませんが、社長交代というものはあっさりしたものなのかもしれません。

だからこそ、役割として冷静に受け止めることができたところがあります。ポーラという会社のあるべき姿を、人から言われた通りにつくるのではなく、自分で考えてつくらなければいけないということを強く思い、これからの企業の役割、社会におけるポーラの役割をちゃんと認識することにしました。

--社長に就任してみて、それまでの社長業のイメージと何か違いを感じましたか?

 明らかに違ったところは、社長は役員よりも先を見据えていなければならないところ。事業担当役員のときも3年後とかを考えてやっていたつもりでしたが、社長はさらに先まで考えていないといけないことを実感しました。

 そして、さらに視野を広げることが大事なこともわかりました。外の世界に興味を持ちいろんな人と会ったり話をしたりする。社内のことで忙殺されるのはよくないことです。

--社長に就任してから気をつけるようになったことがあれば教えてください。

 私は熱くなると楽しくなってディスカッションしてしまうのですが、昨年までとは立場が違うので、言いたくて仕方がないときでも我慢するようにしています。社員と対等の立場で話をしたつもりでも萎縮してしまい、指示として受け取られてしまうことがあるからです。

 秘書には「私が言いすぎていたら指摘してね」と注意をお願いしていますが、秘書から最近「我慢していますよね」と言われることがあるほど。「喋りすぎ」といろんな人から言われ若い頃から怒られてきただけに、言いたいことを我慢するのは私にとってはなかなか大変なことです。

--及川社長自身は今までと変わっていないつもりでも、立場が変わったことで周囲の受け止め方が変わってしまったということですね。

 そうなんです。私は圧が強くて声も大きく、しかも早口で話すので、ディスカッションになると他のメンバーが話せなくなってしまいます。自分はディスカッションするメンバーと対等のつもりでいても、相手から見たら社長ですから、社員を萎縮させないように気をつけなくては、と思っています。

 ポーラには役職名で呼ばない習慣があるので、形式上は上下関係がなくフラットですが、だからといって社員が私に「喋りすぎです」とは言えません。「会社の風土をつくり出すのは私」と思って、自分を戒めているところです。

創業100周年に向け「サスティナビリティ方針」で目標達成を目指す

--貴社はこの6月に「サスティナビリティ方針」を発表しました。これは先ほど仰っていた、「これからの企業の役割」や「社会におけるポーラの役割」に当たるものなのでしょうか。

 そういうことになります。中期経営計画では社員たちに、会社がどういう方向に向かっていくのかを示してきましたが、これからの社会に対しポーラができることを規定したかったのでSDGsに関する方針を打ち出すことにしました。SDGsはこれからの社会で大事なことだというメッセージになりますし、社員にはSDGsに関する方針に沿った行動を取ってもらいたいという思いがあります。

--「サスティナビリティ方針」には、貴社が創業100周年を迎える2029年までの目標数値を盛り込んでいますが、目標達成のためにどのようなロードマップを描いているのでしょうか?

 目標達成のためのステップ1として「ジェンダー、年齢、地域格差、様々な『壁』の解消」を掲げ、17あるSDGsの国際目標の中から3項目を選択しました。この「壁」を解消した後に、ステップ2の「多様な人が、健康に、イキイキと活躍する機会の創出」に移行し、国際目標の中から選択した3項目に取り組みたいと思っています。

 そして、みんなが素敵に活躍するためにも次世代に環境をつなぐことが欠かせないことから、ステップ3として「未来に、次世代に環境をつなぐアクション」を掲げ、国際目標の中から選択した3項目に取り組む考えです。

 選択した国際目標は17項目中9項目ですが、これだけしか取り組まないわけではありません。ポーラの資産を使って特に注力して取り組むものとして、17項目から9項目を選択しています。

ポーラが掲げたSDGsの9項目。

--ジェンダーなどの「壁」解消が日本のSDGsでは最大の課題という認識でしょうか?

 ジェンダーギャップが一番の問題だと捉えています。解消されつつあるとはいえ、世界経済フォーラムが毎年発表するジェンダーギャップ指数で日本は、2019年12月の発表で153か国中121位と過去最低。男性と比べて女性は非正規雇用が多かったり同じ仕事でも収入格差が存在したりするほか、意思決定者が圧倒的に少ないです。

 社長に就任するときに知ったのですが、私は日本の歴史ある化粧品会社では初めての女性社長です。外資系の化粧品会社やベンチャー会社では女性社長は珍しくありませんが、歴史の長い日本の老舗化粧品会社では初。これには自分が一番ビックリしました。日本では私が社長に就任したことが新聞で話題になるぐらい珍しがられましたが、海外だったら誰も珍しがらないと思います。

ポーラにはジェンダーギャップを解消するDNAがある

--ジェンダーギャップ解消については、管理職の男女比率に関する目標を掲げています。

 現在、課長や部長といった管理職の約3割が女性ですが、2029年までに現在の総合職社員の男女比である53:47に近づけることを目標に掲げました。別に女性優位な社会をつくりたいわけではなく、機会平等な社会をつくりたいと思っています。

 私は、ジェンダーやダイバーシティの問題を考える上で一番大事ことはチャンスを与えることだと考えています。

 ポーラは1929年に創業しましたが、創業当初、営業は男性の仕事でした。しかし1937年に、京都の営業所に「女ではあきまへんか?」と営業を志望する女性がやって来て、「やらせてみよう」ということになったんです。

 以後、女性がセールスをリードする概念が定着し、現在は約4万1000人のビューティーディレクターが活躍しています。「女ではあきまへんか?」と言ってきた女性にちゃんとチャンスを与えたということは、ポーラの男性社員にはチャンスを与えるというDNAがあり、戦前・戦後と女性たちに経済的自立の道を与えてきたということは、ポーラにはジェンダーギャップを解消するDNAがあると思っています。

--「サスティナビリティ方針」では、ビジネスパートナーに当たるショップオーナーについても言及していますが、これはなぜでしょうか?

 ショップオーナーである女性たちが地域社会をリードすることができると、ジェンダーギャップ解消の一助になると考えたからです。ショップオーナーは個人事業主で、現在、日本全国に4000人ほどいます。地域の商業者の集団に女性の知恵や感覚が入ることは、ジェンダーギャップを解消する上で大事なことです。

 4000人のうち、月商1000万円以上の「グランドオーナー」と呼ばれる人たちが全国に190名ほどいます。グランドオーナーは少なくても2店舗、多い人になると100店舗以上を束ねるほど。そういう人たちが日本にいることをきちんと示し、会社のために動くのではではなく地域社会の経済ネットワークの中で様々なことにトライしていくことは、ジェンダーギャップ121位を解消していくのに役立つはずです。

「グランドオーナー」のように地域社会で存在感があり、リーダーシップが発揮できる女性を増やすことでジェンダーギャップが少しでも解消が図れるよう、「サスティナビリティ方針」では、複数ショップを束ねる月商500万円以上のショップオーナー数を2029年までに1200人まで増やすという目標を設定することにしました。女性たちを鼓舞しロールモデルとして活躍してもらうには、地域経済の活性化や雇用促進などで示せる実績が大切なので、月商で目標を設定しています。

--先ほど「女性優位な社会をつくりたいわけではなく、機会平等な社会をつくりたい」と仰っていましたが、だから美容職のダイバーシティ推進も目標に掲げたのですか?

 美容職には男女の垣根はありませんが、これまではなぜか女性優位なところがありました。しかし、メイクアップアーティストに男性が多いことからわかりますが、男性は女性の美しさを引き出すのが得意です。肌やメイク、美容のことは男性でも何ら問題ありません。男女の垣根をなくすために、男性美容職の採用を始めており、現在、3名の男性美容職がいます。志望者も多いですよ。

--育休取得率を2029年までに男女ともに100%にするという目標にも、機会平等な社会をつくるという願いを込めているのですか?

 育休は女性だけが取ると家事・育児のワンオペを助長することになりますので男性、とくに男性管理職の育休取得は積極的に推進を図っていきたいです。

 男性の育休取得は2010年からこれまでの間に7人しか例がありません。ポーラでは育休を取得したからといって昇進には影響しませんが、「育休を取りたい」と思うところまで至っていません。「仕事をしなければ」という意識の壁があるのでしょう。

--男性の意識が変わらないと、育休制度はあっても活用されません。

 これはポーラだけではなく日本社会の課題だと思います。育休を取りやすくするためには上長からの働きかけも必要でしょう。

 ただ、育休制度については、あり方を見直す必要性があるかもしれません。現在の育休制度はオフィスに出社してくる働き方が前提になっていますが、新型コロナウイルスにより在宅勤務を推進するようになりました。

自宅で仕事しながら育児をすると仕事に集中できないので、在宅勤務であっても育休は必要でありなくすことはできませんが、現実に沿った実効性のある育休制度への変更は今後の検討課題です。

取材・文/大沢裕司
撮影/深山徳幸

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