全滅に近かった今年のビアフェス。2010年から毎年、東京、大阪などの複数都市で開かれてきたビアフェス「ベルギービールウィークエンド」も、今年は5会場33日間の予定が、すべて流れた。それが10月のウィークエンドに、東京・豊洲で日の目を見た。23(金)〜25(日)にも開催される。
ベルギービールウィークエンド2020豊洲の会場から晴海方向。
3密を避けながら楽しむビアフェス
開催にあたり、コロナ対策として、会場内の3密を避ける予防策が多々施された。公式HPでは会場の混雑状況がリアルタイムで配信されている。入場券は事前にオンライン販売されており、受付に人が並ぶリスクを回避している。
HPには会場内の混雑状況によって入場制限をする場合もあると明記されている。逆に、十分なスペースが確保できれば、当日券での入場が可能だ。筆者が訪れた10月18日(日)の午後3時半は、混雑状況60%程度で、当日入場が可能だった。
受付で検温を受けて入場する。天候に恵まれ、会場は想像以上に、にぎわっていた。久しぶり見る「アウトドアに人がたくさん」の光景である。とはいえ、例年の日曜の午後に比べたら少ない。ソーシャルディスタンスを保つため、1つのテーブルには1グループで、空き椅子があっても異なるグループの相席は見られない。
コロナ禍の中、事務局は当初、横浜開催をめざしていたという。しかし7月の感染第2波を受けて断念。何とか1つだけでも開催しようと、8月下旬から新たな会場を探し始めたという。条件はいろいろあるものの、「アウトドアであること、ベルギービールウィークエンドらしい雰囲気のいい所を探しました」と、プロジェクトマネージャーの内海偉紀さんは話す。そして10月開催に間に合ったのが豊洲だ。現地のレストランCITABRIA BAYPARK grill & barの協力を得て、フードメニューが提携された。
会場は豊洲市場に近い。水路を隔てて向こうは晴海。右手に晴海大橋、左手に豊洲大橋、その向こうにオリンピック/パラリンピック選手村のマンション群が見渡せる。水路沿い整備された歩道をジョガーが次々と走り過ぎる。東京のフロントラインをバックにビールを楽しめるという点では、横浜以上に開放感があり、六本木ヒルズ以上に都会的な会場と言えるだろう。
会場内、コロナ対策として目を引いたのは、グラスをすすぐグラスリンサー(洗浄機)の隣に設置されたセンサー式の手洗い用のシンク。卓上型の自動おしぼり機。消毒スプレーを手にしたスタッフたちの姿だった。
来場者も飲食中以外、たとえばビールやフードのブースに行くときはマスクを着用している人がほとんど。感染予防を心得て、マナーを守ってビアフェスを楽しんでいた。
「ベルギービールが大好き。今年はないのかなとあきらめていたので、うれしいですね」と話す30代のカップルは、豊洲自体も初体験だと喜んでいた。ベルビービールウィークエンドのオリジナルグラスをコレクションしているという男性は、「毎年、日比谷会場に行っていました。いつもと違う会場もいいですね」と、夕陽とビールの撮影に余念がなかった。
豊洲大橋の上に夕陽がかかる。橋の向こうにオリンピック選手村のマンション群が見える。
2020限定ビールあり。樽生多めのラインナップ
気になるビールのラインアップは、例年より少ないものの、43種類がそろった。
「インポーターは当初の予定だったゴールデンウィークの開催に間に合うようにビールを輸入し、通関を済ませていました」(内海さん)。
しかしその直後、日本でも一気に感染が拡大した。4月には緊急事態宣言が発せられ、ビアフェスはもちろんのこと、ベルギービールの卸先のレストラやバーでの消費も激減してしまった。
「倉庫に眠り続けるビールをムダにしないためにも、開催したかったですね」。今回、豊洲で飲めるのは、やっと日の目を見たベルギービールなのである。
中でも注目ビールは、トラピストビールの花形と呼ばれる「シメイブルー」の2015年ヴィンテージボトル。ランビックでは「ブーン・ランビック」の樽生。ベルギービールウィークエンド用に造られた限定ビールで、5種のホップを用いた「ウルフドライホップウィークエンド2020」など。このほか、樽生の「デュベル・オン・タップ」、ホワイトビール、トラピストビール、アビィビールの定番もそろっている。
今年は希少価値となったビアフェス。来年はどこで開催されるのだろうか? コロナの収束を願いつつ、いつもと違う会場でベルギービールを楽しんでほしい。
ベルギー名物、LUTOSAのカリカリのポテトフライ。なぜかどのビールにも合う。
(データ)
ベルギービールウィークエンド2020豊洲 https://belgianbeerweekend.jp
日時:10月23日(金)16時〜22時、24(土)〜25日(日)10時〜21時
会場:CITABRIA BAYPARK grill & bar
取材・文/佐藤恵菜