
コロナ禍でデジタル施策に乗り出した企業に役立つ情報を提供する本シリーズ。今回は「オウンドメディア」を活用する最新の手法を、その道のプロに聞いて紹介する。
オウンドメディア活用がおすすめの状況とは?
コロナの影響でデジタル化し、新たにオウンドメディアを始めた、もしくは始めようと計画している企業もあるだろう。
オウンドメディアとは、「Owned Media」つまり「自社で保有するメディア」を指す。見込み顧客の獲得やファンづくり、企業や商品のブランディングなどに活用されている。
代表例としてはサイボウズの「サイボウズ式」、クラシコムジャーナルの「北欧、暮らしの道具店」、資生堂の「watashi +」などがある。
オウンドメディアは、どのような状況でおすすめの手法だろうか?
特にオウンドメディア支援に力を入れているWebマーケティング支援会社、株式会社セルリアの代表取締役 佐藤靖将さんに話を聞いた。
【取材協力】
佐藤靖将さん
株式会社セルリア 代表取締役
総合的なWebマーケティング支援を提供する株式会社セルリアの代表。特にオウンドメディア支援に力を入れており、大手企業からベンチャーまで実績多数。クライアントの目標を共に背負い、一緒に伴走しながらプロジェクトを進めることがモットー。
https://selrea.jp/
●Webサイトのアクセスを伸ばしたい場合
「オウンドメディアは、Webサイトのトラフィックを増やす有効な手法です。その他の手段と比べて時間はかかるものの、継続していくことで、Webサイトのアクセスが積み上がるようにして成長します。
したがって、ビジネスにおける課題が、『認知度』や『ユーザーをWebサイトに連れていくこと』である場合において、他のWebマーケティング手法よりもおすすめといえます」
●消費者との信頼関係を強め、ブランディングに役立てたい場合
「オウンドメディアを媒介したコンテンツの発信は、そのほかの宣伝手法に比べ、ユーザーに対してメッセージを伝えやすく、ダイレクトに受け入れられやすいという特徴もあります。したがって、消費者との距離を縮め、『親近感』や『信頼感』を生むことにつながります。
反対に、いますぐ商品を購入するであろうユーザーをすぐに刈り取りたい、といった状況にはおすすめしづらい手法です」
オウンドメディアで成功するため5つのポイント
オウンドメディアで成果を上げるためには、どんなポイントがあるだろうか。佐藤さんは次の5つを挙げる。
1.徹底的に調査した上で、運用のコンセプトを明確に持つ
「オウンドメディアは、今では決して新しい先駆的なマーケティング手法というわけではなく、すでに多くの企業が取り組んでいて、一定の市場を築いています。どのような業界であっても、自社とターゲットが重なる競合メディアがすでに存在することがほとんどですので、まずそういった先輩メディアを調査することをおすすめします。市場の状況も同様に、どのようなコンテンツが求められているか、細かく状況を調べた上で企画すると、想定に近い結果が得られやすくなります。
調査結果を踏まえ、自社がどのような目的でメディアを運用するかを決定します。そのような流れでメディアの立ち位置を整理していくと、『運営メディアはどのようにユーザーに価値をもたらすのか』といった重要な点が自ずと見えてきます」
2.成果を上げたいのであれば、まず行動量を増やす
「『コンテンツ更新の量を増やす』『PDCAサイクルを早め、課題解決・仮説検証の量を増やす』ことが成果に直結すると考えています。この場合の成果とは、Webサイトのアクセスだけでなく、商品の購入、売り上げなども含みます。
オウンドメディアはよくも悪くもコンテンツの発信量や改善スピードなどが成果に直結するため、その点において競合他社よりも劣ってしまう場合に、成果は停滞します。
また、オウンドメディアを運用していく過程では様々な課題にぶつかります。課題解決を先延ばしにしてしまうと、その分、やはり成果に影響しますので、なるべく早いサイクルで課題を解決していく体制があったほうが堅調に成果を伸ばしていくことができます」
3.ユーザー視点で考えることが前提。ユーザーの心理と行動について考え抜く
「相手視点でメッセージを伝えるというのは、コミュニケーションの基本とも言えます。特にオウンドメディアによってコンテンツを発信し、継続的にユーザーとの接触機会を作っていく場合においては、ユーザーから共感を得られるかが重要です。
見落としがちなのが、ユーザーの心理だけでなく行動全体を見渡す必要があることです。ターゲットとなる想定ユーザーは、まずどのようにしてWebサイトにたどり着くのか。そしてサイト内でどのような行動をするのかを分析した上で、有効なメッセージの伝え方を検討すると、成果につながりやすく、ユーザーも定着しやすい傾向にあります」
4.オウンドメディア以外にも目を向け、広い視野でビジネス全体を改善する
「オウンドメディア単体の成果だけを見るのではなく、その他のマーケティングや業務オペレーションにどのように影響しているかも見る必要があります。
オウンドメディアによって、ユーザーの認知・信頼を獲得しているからこそ、そのほかの広告の成果が上がる相乗効果が見られるケースもあります。
また、オウンドメディアでユーザーの抱える疑問などの解消を努めた結果、カスタマーサポートの電話対応工数が半分に削減されたといった事例も見受けられます」
5.情報を常にアップデートし、施策に反映する
「インターネットの世界は今もなお日々、目まぐるしいスピードで変化しています。例えば、多くのメディアがユーザー獲得の柱としているGoogle検索についても、3~6ヶ月に1回程度の頻度で大きなアップデートを繰り返しており、そのたびにWebサイトのチューニングが求められます。コンテンツの拡散に大きく寄与するSNSについても同様に、年々変化しています。
そのような変化に置いていかれてしまうと、後々デメリットが大きくなっていってしまうため、常に新しい状況に順応していく姿勢が求められます。常に情報はアップデートし、その都度施策に反映することが重要です」
オウンドメディアはwithコロナでどう活用できる?
オウンドメディアは、特にwithコロナではどのような役割を果たすのか。佐藤さんは次のように述べる。
「withコロナで、オウンドメディアは『顧客の信頼を獲得・維持するツール』としての役割を果たすと思っています。
withコロナでは、その前と比べて、人々は直接的な接触を控えようとする傾向が見られていると思います。そのような状況下では、サービスを比較検討する際にユーザーが事前に調べて得る情報や、事前にサービスについて持っている印象などが、より購入につながりやすいといえます。
オウンドメディアが直接、売り上げにつながらないと言われる最大の理由は、得られたアクセスに対し、購入につながっているユーザーが少ないと感じられるからでしょう。
しかしながら、現在ほとんどのユーザーが最初に『ネットで検索して』商品選びをします。そのときに『まず知ってもらえるか』そして『信頼を得られるか』が、ユーザーに商品を購入・利用してもらえるかの重要なファクターといえます。スマホが普及して以降、急速にその傾向が強まっていますが、withコロナでさらに強まり、市場に大きな影響を与えていくと予想されます」
今の時代、オウンドメディアは顧客の信頼を獲得・維持するために重要な手段であることがわかった。今回紹介された成果を出すポイントをヒントにして取り組んでいこう。
取材・文/石原亜香利
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