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何もない部屋のほうが退屈しない!?スマホを持たない時間のアドバンテージを考えてみた

2020.10.20

 どうしても考えがまとまらない時は外に出て少し散歩することが多い。そして実際、少し歩いてみると懸案の事項がどうにかなったりもする。こうした散歩の“効能”を決して侮ることはできないのだ……。

公園を散歩しスポーツ施設のカフェレストランに入店

 相変わらず“歩きスマホ”はよく見かけるが、せっかくの散歩中にスマホを見るのはナンセンスだろう。それなら部屋の中で立ってスマホを見ているのと何ら変わらないではないか。

 快晴の午後、東京・新宿区にある戸山公園を歩いていた。今年の猛暑が懐かしく感じられるほど涼しく清々しい気候だが、もちろんまだ紅葉ははじまっていない。平日なので人もそれほど多くなく歩きやすい。スポーツやダンスなどの団体の利用も特にないようだ。この公園には大きなスポーツ施設もある。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 高校生までは人並みにスポーツにいくつか取り組んだことはあるが、それ以降は特に趣味としてスポーツに楽しむことがないまま今日まできている。

 とてもじゃないがスポーツなどする時間がなかったというのが率直な言い分にはなるが、本当にそうなのかよく考えてみれば実はそんなことはなさそうなことも思い当たる。だいぶ前のことだが、管理釣り場でのルアーフィッシングに熱を上げた時期があったのだ。その時期はもちろん、どうにか時間を捻出して釣り場に通っていた。いくら仕事で忙しくとも本当にやりたいことであれば人はするものなのだろう。

 そう考えれば、やはり本心からやりたいスポーツがなかったということになる。そうした結論を突きつけられるのだとすれば確かに否定はできない。

 ジャージ姿の若い男たちの一団がスポーツ施設から出て来る。そのうちの何人かは大きなボールを抱えていることから、どうやら今までこの施設の体育館でバスケットボールに興じていたようだ。

 釣りなどとは違い、何らかのスポーツをするには確かにある程度の人づき合いも必要にはなってくるだろう。陸上競技やマラソンなどは完全に1人でもできるかもしれないが、たまには一緒に練習したり大会に出る仲間がいないことには続けるのは難しくなるかもしれない。

 とすればスポーツをしてこなかった理由の一つに、スポーツを通じた人づき合いが面倒だったというのも考えられる。しかしそれも本当にその競技が好きなのであれば難なく越えられるハードルかもしれない。

 いつになくスポーツについて考えを巡らせてしまっているが、そんなことができるのもネットに繋がったスクリーンから離れ、手に何も持たずに散歩をしているからだろう。スマホを見ながらではこんなふうに考えを巡らすことはできない。

 バスケの一団が出てきたスポーツ施設に向かい中に入ってみた。かなり大きな施設であることは外観からもわかるが、温水プールをはじめ体育館や武道場、多目的コートなど内部も充実しているようだ。受付前の広いホールにはジャージや競泳水着などのスポーツウェアも販売されている。

 1階の一部はコンビニエンスストアになっていて、そこに隣接した小さなカフェレストランもある。遅い昼食にする案も悪くはない。このお店に入ってみることにしよう。

何もない部屋は退屈しない!?

 店内は実にシンプルな内装とレイアウトだった。壁とテーブルは白く、椅子は明るい木目調で統一されていて、“意識高い系”企業の会議室だったとしても不思議ではないほどだ。唯一、会議室“らしくない”のは壁に絵画がけっこう多く架かっている点だ。この絵がなければ本当に会議室である。

 注文は店の奥にあるレジカウンターで行い先に料金を支払う。このカウンターのさらに奥が調理場のようだ。ビーフカレーとアイスコーヒーを注文し、隣にある冷蔵ケース中の作り置きの小鉢の中からコロッケを選んで追加する。あとは好きな席に着いて渡された番号札をテーブルに置いて待つだけだ。

 午後1時をだいぶ過ぎた時間ということもあるのか、先客は3人でいずれも1人客だ。閑散とした店内がさらに“会議室感”を高める。

 シンプル過ぎる店内だが、決して居心地が悪いということはない。それを裏付けるように最近の研究で、モノが少ないシンプルな部屋にいる時のほうが、モノが多い部屋にいるときよりも退屈しないという意外な結論が報告されているのである。


 機会費用が高い場合に退屈が発生する可能性があるという仮説を検証しました。つまり研究者が割り当てた活動以外の活動に従事することの潜在的な価値が高いケースです。

 この目的のために、参加者は多くの可能なアフォーダンス(ノートPC、レゴブロックなど)のある部屋に配置されるか、空の部屋に案内されました。どちらの条件でも、参加者は自分の考えの中だけで楽しむように指示されました(したがって、アフォーダンス条件の参加者は、利用可能なオプションに従事することを禁じられることになりました)。

 予測されたように、アフォーダンス条件の参加者は、対照条件の参加者と比較して、より高いレベルの退屈を報告しました。結果は、いくつかの条件下では、代替活動を提供する環境は、そのような活動がない環境よりも退屈である可能性があることを示唆しています。

※「Taylor & Francis Online」より引用


 カナダ・ウォータールー大学の研究チームが2020年5月に「Cognition and Emotion」で発表した研究では、228人の実験参加者を2つに分け、一方を何もない部屋へ、もう一方をパソコンやレゴブロックが置いてある部屋へ入れ、椅子に座って身体を動かさずに15分間過ごしてもらう実験を行っている。

 空想の中でのみ楽しむことを条件づけられ、身体を動かしてはいけないので、パソコンを触ったりレゴブロックを組み立てたりすることはできない。そしてこのモノがある部屋にいたほうのグループが総じてより強い退屈を感じていたのである。

 ビーフカレーが運ばれてきた。ミニサラダがついてくる。カレーのご飯は雑穀米でけっこうなボリュームで美味しい。コロッケにもサラダがついているのが嬉しい。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 今回の研究の鍵を握る概念が「機会費用(opportunity cost)」である。機会費用とはある選択を行うことで失ったものの価値のことで、モノが多い部屋にいたグループはこの実験では部屋の中にあるパソコンやレゴブロックに触れる機会が失われた状態にあった。しかしもう一方のグループはそもそも部屋に何もないのでこの機会費用が生じなかったのである。

 つまり目の前にいろいろと楽しめそうな選択があるのに、それを選べなかった場合、機会が奪われたのだと認識し、今の状態がより退屈に感じられてくるという心理的メカニズムが示されたのだ。一方で初めから選択肢がない場合は、今の状態に集中することができてあまり退屈することはないのである。

スマホの使用が禁じられると集中が削がれる

 隣のテーブルにいるスーツ姿の男性はおそらくずっと前に食事が終っていると思われるが、一向に席を離れる気配がない。

 今のご時世だけにテーブルはパーテーションで仕切られているのだが、このお店では透明ではなく“曇りガラス仕様”のものを採用しているため隣の詳しい様子はわからないが、おそらくスマホを弄っているようだ。会議室のような環境だけについつい長居してしまっているのかもしれない。

 せっかく何もない部屋にいるのだから、今回の研究にならえばスマホなど見ずに考え事やせめて読書などをしたほうがよさそうにも思える。今回の研究結果から示唆されているのは、スマホを持って学校に来ている生徒はスマホを持っているという事実だけで授業に集中できていない可能性だ。たいていの場合、授業中のスマホ使用は禁じられているが、それによって機会費用が生じてきてフラストレーションに苛まれるのである。その一方でスマホを持ってきていない生徒は当然そうした懸念があるはずもなく授業に集中しやすいといえる。

 ネットから離れてここに散歩にきたおかげで、スポーツについて考えることができたわけだが、これはまさに機会費用からフリーの身になっていることのおかげであるといえるだろう。とすればスマホを持たない時間にもアドバンテージがあることになる。

 ともあれ今までスポーツをやってこなかった自分が、今後何らかのスポーツをはじめることなどあり得るのだろうか。どう考えても自分がスポーツをはじめるとは思えないのだが、例えばこうしたスポーツ施設で何らかの教室や講習会などに参加してみるという選択がないわけではない。あるいは特定のスポーツをするのではなく、ジョギングを日課にしたりジム通いをするとするという手もある。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 アイスコーヒーが運ばれてきた。何の変哲もないアイスコーヒーだがもちろんこれでよい。ストローがないのはやはりプラスチック汚染を意識した今のご時世を反映してのことだろうか。店の人にリクエストすれば貰えるのかもしれないが、よく考えてみればアイスコーヒーやアイスティーだからといってストローで飲まなければならないという法はない。

 それでもお店でアイスコーヒーをグラスに口を着けて飲むのは実に新鮮な体験だ。これもまた違った意味で今後の“ニューノーマル”になるのかもしれない。

 さて、この会議室のような実にシンプルな店内でアイスコーヒーを飲みながら、もう少し考えを巡らせてから帰るとしよう。

文/仲田しんじ

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