
「来月から、あなたにこのチームのリーダーをお願いしたい」
あなたは上司からこう言われて「はい!」と即答できるだろうか。
「いままでリーダーなんてやったことないし」
「指導をして嫌われたらどうしよう…」
「初めて部下や後輩ができたけど、どう接していいか分からない」
仕事が評価されリーダーをまかされたことが嬉しい反面、自分にリーダーが務まるのかと不安になってしまう人も多いだろう。
「このような不安は、誰もが抱きやすい自然なものですが、リーダーとは○○でなくてはならないという思い込みによって起こりやすいものでもあります。いくつかの思い込みをなくすだけで不安が解消することもありますよ」と話すのは「「この人なら」と慕われるリーダーになれる(サンマーク出版)」の著者である佐々木順子さん。
「私自身、外資系企業で2000人のチームを率いてきましたが、実は、始めて管理職になったときには、次々とトラブルが発生し、1年もたたずに降格させられてしまった経験もあります。残念なことに、お客様とのトラブルを法廷で解決せざるをえなかったこともあります。でも、様々な壁を乗り越え約30年間リーダーを務めてきました」と佐々木さん。
今回は、佐々木順子さんの著書より「「この人なら」と慕われるリーダーになる方法」を紹介する。
「リーダーはいつも強くないといけない」
「自分にリーダーなんて無理と考えてしまう人は、自分の中に確固たる「理想のリーダー像」が確立されすぎているんです」と佐々木さん。
「あるべきリーダーの姿は、いつも強くて、正しくて、実行力もあって決断力もあって…」と自分の中にある「理想のリーダー像」にくらべ自分は劣っていると勝手に自分で優劣をつけているというわけだ。
「実は、今求められているリーダーというのは昔のような強いカリスマ性のあるリーダーばかりではありません。リーダーだって、教えてもらったり頼ったりしていいのです。自分が強いリーダーになるのではなく、チーム一人ひとりの弱点や長所を生かして強力なチームを作る。それこそが本当に強いリーダーです」と佐々木さんは言う。
リーダーなんてやりたくないと思っている人は、自分の中の「リーダーとは○○であるべき」という思い込みを手放すことから始めるとよいだろう。
「なんでもできて優秀じゃなきゃダメ」
「あの人は仕事ができて頼りがいもあって、本当に優秀なリーダーだ」
こんな風に周りから評価されるリーダーでなければリーダーは務まらないという思い込みはないだろうか。周りからどう評価されるかが怖くてリーダーになりたくないという人もいるだろう。
「リーダーと言っても、実はそれはただの役割にすぎません。リーダーになったからと言って偉いわけではないのです。リーダーの仕事とはいつも優秀な姿でお手本を見せることではなく、メンバーが働きやすく結果を出しやすいように助けることです」と佐々木さん。
「優秀なリーダーでいなければ」と思うあまりに、間違ったり、簡単に折れたりしてはいけない、と思うのは思い込みに過ぎない。
たくさん失敗したって、大丈夫。優秀すぎなくたって大丈夫。
本当に優秀な人とは、自分が知らないということを知っている人、自分の非を認められる人だと佐々木さんは言う。
「うまく話せないといけないのにできない」
「リーダーなら部下になめられてはいけないとリーダーは迫力のある話し方ができなくてはいけないと思い込んでいる人がいますが、それも大きな間違いです」と佐々木さん。
コミュニケーションの目的とは、相手に自分の意見を伝えて、相手に何か行動を起こしてもらうことであり、迫力は必要ないのだという。
「もちろんリーダーとして侮られるようなことがあってはなりませんが、目上の人にも勝つような議論上手でなくても良いのです。あくまでもコミュニケーションの目的は勝ち負けではなく、その人に何かを協力してもらうことや何かをやめてもらうことだということを忘れないでほしいのです」と佐々木さんは言う。
「自分をコントロールしなくてはいけない」
「リーダーたるもの、怒ったり泣いたりと感情的になってはいけない」と肩ひじを張ってしまう人がいる。
特に女性のリーダーだと「女性は感情的で頼りにならない」と思われているのではないかと不安になり、必要以上に自分をコントロールしようと頑張りすぎてしまうそうだ。
「リーダーだって人間です。必要ならばときには怒ったり泣いたりしてもかまいません。逆にある程度は感情を出した方が人間らしいので、一緒に仕事をする仲間として親近感がわきやすくなりますよ」と佐々木さん。
ただし、それも程度の問題だ。
リーダーであれば、なんでもかんでも感情のまま口にできることばかりではないのも事実。
愚痴は社外の人間に聞いてもらうなど、ある程度の感情のコントロールのすべは身に着けておきたいものだ。
思い込みを手放してリーダーになる
職場で初めてリーダーを任された時に、うまくやらなくてはと思いすぎ、かえってうまくいかないことがある。
しかし、リーダーなら○○でなければならないと自分の中のリーダーの理想像に苦しめられる必要はない。
本書では、特に女性が初めてリーダーを任された時に戸惑いやすいポイントが筆者の体験談を踏まえてまとめられている。
リーダーになりたくないと思うなら、本書でリーダーへの思い込みをほぐしてみてはどうか。
【出典】
佐々木順子著
「「この人なら」と慕われるリーダーになれる(サンマーク出版)」
取材・文/平塚千晶