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父親譲りのコミュニケーション力を大事にして世界に通じるクラブへ導く!V・ファーレン長崎・髙田春奈社長

2020.10.17

「もともとサッカーにあまり興味はなかったんですが、2012年にジャパネットたかたがV・ファーレン長崎の胸スポンサーになってから見に行くようになりました。サッカーはあまり点が入らないのでつまらないと感じることもありました(苦笑)。でも2013年のJ2開幕戦でガンバ大阪が長崎に来た時や、2017年にJ1昇格を決めた試合(同年11月11日のカマタマーレ讃岐戦)で大観衆が物凄く盛り上がるのを見て、本当に胸がワクワクしましたし、長崎にはポテンシャルがあるように感じました。そういうシチュエーションを数多く作って、沢山の人々に興味関心を持っていただくことが大事だと考えています」

父・明社長も大事にしてきたコミュニケーションの重要性

 こう語るのは、今年1月からV・ファーレン長崎の社長を務める髙田春奈氏だ。ジャパネットたかたの創業者で、甲高い声と独特の語り口でテレビショッピングで人気を博したクラブ前社長・明氏の長女である彼女は、77年生まれの43歳。長崎県佐世保市で育ち、国際基督教大学を卒業後、ソニーで5年間勤務した。同社では主に人事畑を歩いたという。

 そして、27歳だった2005年にジャパネットたかたの人材開発を担う関連会社を設立。2010年まではグループ内の人事制度の構築などを手掛けてきた。つまり、30代になるまで、彼女はサッカーとはほとんど関わりのない人生を送ってきたのである。

 2010年からは、広告代理店業務を行う会社を設立。彼女自身、人事とは畑違いの広告営業にも足繁く回るようになり、人とのコミュニケーションの重要性を学んだ。このコミュニケーションこそ、父・明社長が最も大事にしているものだった。2012年からジャパネットたかたがスポンサーになったのを契機に長崎のクラブやサッカーに深く入り込んでいくことになるが、そこでもコミュニケーションの重要性を感じる場面がたびたびあった。その経験が今につながっていると彼女は語る。

「サッカーの専門的なことは分からないですけど、人と人の関わりや意思疎通は全てのベースですよね。お互いに高め合い、ウイン・ウインの関係になれば、広告営業も、クラブ運営、チーム自体も成功すると思います。今はコロナ禍の大変な時ですけど、地域全体がウイン・ウインになる取り組みができるように、自分なりに頑張っていこうと思っています」

 父・明氏がカリスマ経営者だったため、後を引き継ぐことになった春奈社長には重圧もあったことだろう。「髙田明の娘」と見られる難しさも多少なりとも感じたかもしれない。それでも、彼女は持ち前の明るさと前向きさで力強く前進してきた。

「父のやり方を意識的に学ぼうという考えはなくて、小さい時から近くで見ていて自然としみついた感じです。私とはタイプが違うので、学ぶところがたくさんあります。特に『人との接し方』は尊敬していて、一番はやはりいろんな人と積極的にコミュニケーションを取ろうする姿勢です。V・ファーレン長崎の社長だった時も、目上の人から新入社員などの若手社員、初めて会う人に関係なく声をかけ、アウェイクラブのサポーターへもサッカーを楽しむ仲間として接していました。

 社長を退任した後も『サッカー夢大使』という肩書で活動してもらっていますけど、年輩の経営者のスポンサーさんは父と話す方がスムーズでしょうし、若い経営者のスポンサーさんは私の方が近い存在だったりする。そうやってよりよくなるように一緒に働いています。正直、父に勝とうなんて全く考えていません(笑)」

みんなが幸せに、力を発揮できる環境にしたい

 とはいえ、就任翌月には新型コロナウイルス感染拡大が深刻化し、Jリーグが4カ月も中断するというのは想定外だったに違いない。サッカークラブにとって試合が商品。それがない状態が続けば、経営者として頭を悩ませて当然だ。「J1昇格」という大目標を掲げて始動した2020年は平均観客1万人以上を目指していたが、それも困難になった。2019年度は25億6400万円の売上高を記録していた長崎だが、今季は大幅減を強いられる可能性が高い。こうした事態を春奈社長は冷静に捉え、懸命に打開策を練っている。

「コロナの自粛期間は『もう1回、社長就任の準備期間をいただいた』とポジティブに捉え、基盤作りをしようと考えていました。営業部門のデータベース作りと倉庫の整理は一例ですね。このクラブはまだアナログ的なことが多く、デジタル化が進んでいないところもあったので、より効率的に業務を進められるよう、それを整備する時間が取れたのはプラスだったと思います。

 経営面のテコ入れに関しては、華やかなことはやれていませんが、目の前のことをコツコツやるしかないというのが、私が今までの経験で感じていることです。今は来季に向けたスポンサーさんとの話し合いや経営計画の策定をしていますけど、目に見えるメリットを求めてスポンサーになったところはほとんどない。ほとんどの企業が『長崎を元気にしたい』『長崎のために尽くしたい』という思いでクラブに協力してくださっている。そういう方々をどう助けられるか、どうやったらウイン・ウインな取り組みになるのかを考えるのが、自分のやるべきタスクなんです。例えば、飲食店でV・ファーレンのポスタープレゼントの企画をしていただいたり、ビジター解禁に合わせて宿泊業者のPRをしたりと、私たちにとっても助かることで支援できることを中心に考えながらアプローチしています」

 こういった細部への配慮は女性社長ならではの利点かもしれない。春奈社長は「自分が現時点でのJリーグの唯一の女性だから特別に何か思うことはありません」と話す。むしろ「女性、男性はあまり関係なく、みんなが幸せに、力を発揮できる環境にしたい」という思いの方が強いのだ。少数精鋭のJクラブでは長時間勤務や休日返上が当たり前という傾向が強いが、V・ファーレン長崎には目下育児中で時短勤務の社員もいて、「量より質」の働き方を可能な限り、推進しようとしている。時間の制約のある運営スタッフや強化部門のスタッフに同じルールを適用することは難しい面もあるが、ジャパネットグループの効率的な働き方を新しい形でサッカー界に反映させられれば、全体にいい方向に進むだろう。そういう意味でも、彼女の手腕には期待したいところだ。

「私たちのクラブには大きな夢があります。それは『長崎から未来に夢と平和をつなげていく』ということです。サッカーで言えば、長崎出身の日本代表の森保一監督も吉田麻也選手も『平和を発信する重要性』をよく口にされますけど、それを率先してやっていくべきなのが、V・ファーレン長崎だと思うんです。そのためにもJ1昇格は必須テーマですし、近い将来にはアジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場を狙えるような規模のクラブに引き上げていかなければなりません。2024年には長崎駅の近くに建設中の新スタジアムもオープンしますし、コロナが終息した後には世界中から大勢の人々が来るようになる。そういう未来を視野に入れ、世界を意識した国際的なクラブになれるように、経営基盤やチーム力強化を図っていきます」

 手倉森誠監督も「僕のいる長崎は少し時間がかかりますけど、世界レベルを目指したクラブにできるように強化したいですね」と意欲を口にしていた。そのために今季は指揮官のベガルタ仙台時代の秘蔵っ子である二見宏志やリオデジャネイロ五輪世代の秋野央樹、大卒新人の毎熊晟矢らを補強。9月の8戦未勝利のトンネルを抜け、10月に入ってからは再び連勝街道を歩み始めている。J2の上位争いは大混戦で、トップを走っている徳島ヴォルティスでさえも安泰ではない状況だ。ここから終盤戦に向けてまだまだ長崎が巻き返せるチャンスは十分あるはずだ。

「チームのことは監督や強化スタッフに任せていますけど、もがいていた9月はみなさんから話を聞きながら、状況を理解し、一緒にどうすべきかを考えることが自分にできることだと考えました。そうやって『並走』するのが社長である自分の役割なんです。11月にはホームゲームが6試合もありますし、勝負は11~12月の終盤戦になると思うので、そこに向けて少しでもお客さんを増やし、J1昇格機運が高まるように、できることをやっていくつもりです」

 春奈社長就任イヤーのJ1復帰は叶うのか。そしてV・ファーレン長崎は世界基準のクラブに飛躍できるのか。43歳の女性社長のリーダーシップにさらなる期待を寄せたい。

取材・文/元川悦子

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