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クリエイティビティを高めるには脳を退屈にさせる行動が必要?

2020.10.12

 さすがに疲れたかもしれない。身体もそうだが頭のほうも疲れた。早朝に起きて可能な限り仕事を進めて外出しあちこちを移動した1日だった。カフェで執筆した後に用事を済ませるともうすっかり夜だ。明日は外出せずに済むので、どこかで一息つきたいものだ――。

仕事の疲れを癒しに勝手知ったる居酒屋に入る

 頭が疲れてくるとあまり細かいことが考えられなくなる。帰路の電車に揺られ吊革につかまっている我が身の頭はまさに空っぽで、車窓に映る自分の姿が間抜けに見える。少しだけ開けられた車窓もお馴染みの光景になった。……しかし今、本当に頭の中が空っぽなのかといえば実はそうでもないという。

 とりあえず何の作業もしていない状態でいわゆる“ボーっとしてる”状態は、脳が休んでいるようにも思えるのだが、実は「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれる脳の状態で、脳内ではさまざまな活動が同時多発的に活発に行われているのだ。つまり“ボーっとしてる”時こそ、脳がフル稼働しているのである。何もしなくとも脳は疲れるのだ。

 JR高田馬場駅で降りた。早稲田口を出て目の前の横断歩道を信号待ちして渡る。自粛期間中は閑散としていた街にだいぶ人が戻ってきた。それでも大学はまだリモート授業がメインであるため、街の若者の割合は低い。

 早稲田通りを渡って左折する。どこの店に入るか、まだ決めていなかったが、疲れている時はあまり余計なことは考えずに勝手知ったる店に入るのがよさそうに思えてくる。そう思えばここからすぐ近くの店に自然に足が向く。

 進行方向左側には相当な築年数がありそうな大きな雑居ビルが建っている。このビルの角を右折すると、JRの線路沿いがちょっとした飲み屋横丁になっている。訪れるのはやや久しぶりのことになるが、かつては1週間に一度はやって来て飲んでいた時期もあった。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 通りには人気のカレー店やラーメン店もあるが、路地を奥に進んでいき1軒の居酒屋に入る。何度も来ていてメニューもほとんど把握している勝手知ったる店だ。どんなに疲れていても、もしも半分眠っていたとしても注文できそうだ。

 半数くらいは一人客で、2人組のお客が数組いる店内で、カウンター席に着く。生ビールと思いつくままに注文。頭を働かせなくとも利用できる店は単純に楽だ。

脳を休ませるには“退屈”することが肝要

 生ビールのジョッキに続いて「サーモン刺身」、「梅たたききゅうり」、「煮込み」や運ばれてくる。何の代り映えもない酒の肴だがこれでいいのだ。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 スマホが普及してからというものの、現代人の目と頭は休む暇がない。移動中でさえ“常時オンライン”になってしまった今日、休む間もなく次々と情報が押し寄せてくる事態を迎えている。

 まともつき合っていればきりがないが、それでも人々はスマホ画面から目を離さない。店内にいる1人客も大半は飲みながらスマホを眺めている。

 睡眠以外にも脳を休ませる時間を持ちたいものだが、それにはやはりスマホを見続けるべきではなさそうだ。脳を休ませるには“退屈”することが大切であるというのだ。

 2020年8月18日に米・レンセラー工科大学のウェブサイトに投稿された記事では、脳にとって“退屈”がいかに重要であるかを解説している。脳を働かせるのではなく、“退屈”することで逆にクリエイティビティが高まるというから興味深い。


 退屈することは創造性を育むのに役立ちます。多くの科学者や芸術家は実際、懸案事項について考えるのをやめたときに、刺激的なアイデアが浮かんだり、複雑な問題を解決したりしていると報告しています。この“エウレカ(我発見せり)”の瞬間は洞察と呼ばれます。神経科学者は、問題を段階的に解決する場合と、(洞察によって)問題を解決する場合の脳活動のパターンが異なることが示されています。 古代ギリシャのアルキメデスが入浴中に水の移動に関する主要な発見を思いついたことが知られています。

※「Rensselaer Polytechnic Institute」より引用


 レンセラー工科大学の神経科学者であるアリシア・ウォルフ氏は脳の健康にとって、時々退屈することが重要であると説明している。退屈することで脳が休まり、逆にそれまで考えてもみなかった創造的なアイデアが浮かびやすくなるというのである。また退屈している時には社交性も向上するという。

 スマホは眺めないものの、店内のテレビに目が向いてしまう。番組ではこの状況下で奮戦する飲食店を取材したドキュメンタリーをやっていた。ドラマなどと違って、こうした報道ドキュメンタリーはあまり頭を使わずに眺められそうな気がする。

 遅れて注文した「串カツ」と「ホタテの天ぷら」がやってきた。ビールを飲み終えたのでハイボールを注文。ホタテの天ぷらは初めて食べたがこれはこれでよい。

※画像はイメージです(筆者撮影)

退屈から生まれる斬新な発想

 テレビに目を奪われていても仕方がない。脳を休めるために退屈しなければならないのだ。退屈するためにはスマホやテレビから目を離さなければならないが、具体的にどういう状況で我々は退屈できるのか。

 ウォルフ氏によればそれは高い予測可能性と単調なパターンにあるという。つまりこれから経験する行動や体験が簡単に予測できてなおかつ毎回同じパターンであればあるほど、我々の脳は“退屈”するのだ。そして退屈することで、脳は暫しの間、休むことができるのである。

 では退屈し、脳が休まると何が起こるのか。脳が休憩することで、それまで固執してきた懸案事項からいったん解放されて自由になれる。そして思考が柔軟になることで、意識的に考えていたのでは得られない発想やアイデアが浮かんでくるかもしれない。

 古代ギリシャの学者であったアルキメデスが町の公衆浴場で湯船に浸かって心身を癒している時に、予期せず浮力の原理を発見したように、頭を休ませているときにこそ斬新で有望な着想が得られる可能性が高まることになるのだ。

 そう考えてみると行きつけの銭湯やサウナなどを持っておくことは、アイデアや発想の面からはとても重要なことになりそうだ。かつてはサウナに入る習慣があったのだが、最近は時間がなくてなかなか行けてはいない。もっと“退屈できる場所”が必要とされているのである。

 しかしながら、退屈を招く高い予測可能性と単調なパターンということであれば、まさにこの居酒屋に来た自分の行動がそうだ。勝手知ったる店に入り、代り映えのしないメニューを選んで杯を傾けてホッと一息つくという行為は、マンネリな行為であり予定調和である。面白味がないといえばそれまでだが、癒される感覚をおぼえるのも確かだ。行きつけの店が落ち着くのも、脳が休める場所であったということになる。

 とすれば自分はここに単に酒を飲みに来たというよりも、暫しの間、退屈しに来たといえるのかもしれない。この“退屈体験”によってもしも何か良いアイデアが浮かんでくれば願ったり叶ったりだが……。

文/仲田しんじ

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