
東京都も「GO TO」に加わった10月1日、約2年ぶりの電車釣行と相成った。装備は前回よりも利便化を図り、釣り宿とターゲットは前回同様、江ノ島の島きち丸でアマダイを狙う(2年前の模様はこの記事で)。
2年前の電車釣行では、キャリアーにタックルバッグとウエア等を入れたバッグを積んでゴロゴロ引っ張り、竿&クーラーは手持ち&肩かけだった。釣果がいいとクーラーは重くなり、肩にかけるのは辛い。またキャリアーは30年ほど前に買ったものでガタつくし、荷物を留めるゴム紐もかなり伸びていて使いにくい。というわけで状況を改善すべく昨年、キャスター付きのクーラーを購入した。これならクーラーの上にタックルバッグを載せて固定、さほど力を入れずに引っ張ることができ、重いクーラーから解放される。
DAIWA シークールキャリーⅡ/GU2500 本体価格22300円。重量4.6kgは相応と思うが、長さ87cmのキャリーハンドルは、身長174cmの僕にはやや短く使いにくい。
ウエアを入れるバッグはリュックにして背負おうと探し、シマノの大容量35L釣りリュックに目を付けた。だがいかんせん嵩張るので、置き場所に悩み購入を躊躇していた。
シマノ デイパックDP-021Q 本体価格5900円。35L、22×35×55cm。厚手のウエアを着る真冬に、このサイズはありがたい。
そんな折、防災リュックの新聞チラシを見た。その容量は40Lと大きく、いわゆる防災リュックのイメージの倍くらいのサイズだ。しかしそのチラシは、大容量ゆえの収納力を謳っている。僕はベッド横に防災リュックを置いているが、やはり30年くらい前のもので小さい。チラシでリュックの中身として紹介されている、防災グッズいろいろの半分も入らない。そこで防災グッズをたっぷり収納できる大きなリュックを探していた。アウトドア&スポーツブランドの40L級リュックはデザインに惹かれるが、防災リュックにおしゃれ感は不要、何よりも1万円を超えるので買う気は起きない。
これだけ入れても、まだまだ入る(防災グッズは仮の品揃え。こんなに電池は不要だし、体拭きシートは20枚もあれば十分だろう)。
こんな状況下、ある時、閃いた。“釣りリュックと防災リュックを兼用にすればいい!”。釣りに使うのは年にせいぜい数日、通常は防災グッズを入れてベッド横に置く。元々リュックが置いてある場所に置くのだから、新たなスペースは不要だ。シマノの釣りリュックは、実売価格5000円ほどで値頃。濡れた釣りウエアを放り込んでもいいように、内部が防水仕様なのも便利。現役編集者時代は数々の名アイディアを生み出してきたと自負しているが(?)、これはリタイア後、最高の名案。物忘れ急増中の高齢者予備軍にしては上出来だ。
話を釣りに戻そう。これまでの電車釣行は早朝出発だったが、今回は前泊とした。なにせ「GO TO」、藤沢駅徒歩3分、広さ14㎡の部屋に2600円で泊まれるのだ。しかもそのホテル、今年4月オープンというできたて。3時半に起きて2時間かけて江ノ島まで行くのと、5時に起きて15分で江ノ島に行くのでは、体の負担が大いに違う。そのコストが2600円なら、年金生活者でも惜しくない。
宿泊料2600円ながら、最上階角部屋でベッドはセミダブルだった。
釣り当日の10月2日は、天気予報通り快晴で爽やか。出船は6時半ながら5時40分には船上にいた。かなり早い到着のはずだが、平日なのに船は既にほぼ満船で驚いた。乗船予約者最後の一人、我が釣友の正林さんが到着した6時15分、早めの出船となった。一人釣行のつもりだったが、その話を正林さんにするや「俺も行く」。なお正林さんとのアマダイ釣りはなんと9回も記事にしているので、ご興味があれば第1話、第2話、第3話、第4話、第5話、第6話、第7話、第8話、第9話をお読みあれ。
ポイントの江ノ島沖まで約15分、ほぼ半年ぶりのアマダイ釣り第1投に早速のアタリが。いい感じの引きで本命かと思ったが、小アラだった。小さくてもアラはアラで高級魚。以前釣った小アラでお吸い物を作ったところ、その出汁の濃さに感動したものだ。まずは、幸先のいいスタートとしよう。第2投にもアタリ、今度はムシガレイだ。ムシガレイはアマダイ釣りの定番外道、姿形が似たガンゾウヒラメと違って干物が美味しいというのが僕の持論で、これまたオーケーだ。ところが第3投、第4投とあたり続けるもムシガレイの3連釣で、これは果たしていいのか悪いのか……?
そうこうしているうちに1時間が経ち、お隣に座る正林さんが小ぶりながら本命を釣る。だがアマダイ釣りの真髄を掴んだ僕に(第9話参照)焦りはない。8時半に小型の本命第1号、9時20分にややサイズアップの第2号、10時には正林さんとダブルヒットと数を伸ばす。5匹も釣れば上出来な釣り物だけに、型には不満ながら順調だ。
そして10時20分、竿を合わせると強い引きがくる。今までとは全く違い、良型本命を確信、正林さんに竿の曲がりぶりを撮影してもらう。だが正体は中アラ(事実上は小アラだが、先ほどよりは型がいいのであえて中アラと呼ぶ)。このサイズなら刺身も問題なく、大歓迎の外道だ。以後、ポツポツと本命とムシガレイが来る。
この引きはアマダイなら40cm級。アラのほうがアマダイより力が強い、と実感。
海は相変わらず穏やか、昼が近づき少々暑くなり、電車釣行なればこその昼ビールといく。車釣行ではドライバーに申し訳なく、こうはいかない。1時半に納竿、終わってみればアマダイ6匹、当日の竿頭が7匹だから好釣果と言っていいだろう。数えていないが、正林さんも僕と同様の釣果だったから、竿頭は正林さんかもしれない。
帰りは藤沢で小田急線からJRに乗り換え、プラス1000円払ってグリーン車で東京へ。昼間だからすいているし、二人とも釣果は悪くないし、酒を飲みながらの話も弾む。ただし帰宅後は一苦労だ。
好きでやっているのだから愚痴は言えないが、道具やウエアのメンテナンスに90分はかかる。さらにアマダイ6匹、ムシガレイ8匹、アラ2匹、計16匹を捌くとなると、僕の腕では2時間仕事だ。都合3時間半かけてやっと下処理終了、時刻は既に8時近く、空腹&ビールが恋しい。調理は明日にしよう。
まあまあサイズのアマダイは昆布締め、小さいアマダイとムシガレイは干物、アラは中小とも刺身とした。アマダイの昆布締め、いつもは3〜4日後に食べるが、今回は翌日食して開眼。ハタのような身の締まった魚と違い、アマダイのような水気の多い魚の昆布締めは、日を置くと身が固くなりすぎ、翌日くらいが食べごろだと知る。
満ち足りた電車釣行だったが、改善すべき点もある。駅の階段を昇降したり電車に乗り降りする際は、両手でエイヤと荷物を持ち上げるのだが、重くて辛いだけではなく、クーラーにタックルバッグを載せた状態では持ちづらい。しかるに正林さん、キャリアー上はクーラーだけ、リュックを背負って竿1本手持ちという出で立ちだった。僕がタックルバッグに入れた釣り道具をリュックとクーラーに分散し、タックルバッグ不要としたのだ。さすが“モノ好き”の正林さん、モノ減らしも上手い。
次回は、35L大容量リュックの有効活用にトライしよう。
文/斎藤好一(元DIME編集長)