『杜若』は身近な花ですが、特徴を知っていますか?特徴と併せて読み方や名前の由来、花言葉などを紹介します。栽培しやすいため、自宅で育ててみるのもおすすめです。上品なアレンジメントが映える杜若は、ギフトとしても喜ばれるでしょう。
杜若はどんな植物?
『杜若』は植物の名前ですが、読み方が分からないという人もいるかもしれません。ここでは杜若の読み方やどのような特徴を持つ花なのかを紹介します。似たような花との違いについても参考にして、見間違えしないようにしましょう。
読み方は「カキツバタ」
杜若の読み方は『カキツバタ』で、アヤメ科の多年草です。水辺などの湿地に群れをなして生息し、青みがかった紫色の花を咲かせます。
古くから日本に生息している花で、現在でも初夏の花として親しまれています。江戸時代から改良されてきた植物なので、品種が多いことも大きな特徴といえるでしょう。
江戸時代の画家である尾形光琳が描いた『燕子花図』の屏風も有名です。ネイビーブルーに近い深い紫色の花が印象的で、時代を超えて日本を代表する芸術作品の一つです。
万葉集にも登場する親しみ深い花
実在する日本最古の和歌集とされている『万葉集』には、花を詠んだ歌が多数存在します。杜若を詠んだ歌もいくつかあり、昔の人々にとってなじみ深い花であったことがうかがえます。
中でも広く知られているのが、『杜若 佐紀沼(さきぬ)の菅を 笠に縫ひ 着む日を待つに 年そ経にける』という歌です。菅で作った笠を着ることを結婚にたとえ、結婚を待ちわびているうちに年を重ねてしまったという切ない心情を詠っています。
水辺に咲き誇るきれいな紫色の花を眺めながら、愛しい人との結婚への思いを募らせていたのかもしれません。
アヤメ、ショウブとの違いは?
杜若と似ている植物のアヤメとショウブは、どちらも『菖蒲』と書きます。3種類の花を見分けるには、『生息場所』『背丈』『花の大きさ』『花びらの模様』の四つに注目しましょう。
杜若は湿地帯に生息し、50~70cmの背丈に成長します。他の2種類と比較すると、背丈も花びらの大きさも中間に当たります。花びらの根元に白い模様が付いているのが特徴です。
アヤメは乾燥地帯に生息し、背丈は30~60cmで花の大きさも小さめです。花びらの根元から中央にかけて網目の模様が付いています。
ショウブは湿地帯と乾燥地帯のどちらにも生息しています。背丈は80~100cmで最も高く、他と比べて花も大きめです。ショウブは数多くの品種がありますが、花びらの根元に黄色い模様が付いているのが特徴になります。
杜若の名前の由来
はっきりとした由来については不明ですが、名付けについて有力だとされる説はあります。どのような説なのか、また、別名についても紹介します。
「掻付花」を語源とする説が有力
日本では、衣類などの染料にさまざまな植物を用いてきた歴史があります。杜若も染料として使用されていたため、古くは『掻付花(カキツケバナ)』と呼ばれていたそうです。現在の杜若という名前は、この掻付花が由来だとする説が有力です。
花から出る液を布に擦り付けるようにして染めることで、鮮やかな色合いが出せます。この工程から『掻付花』と呼ばれるようになり、次第に現在の発音に変化したのです。
万葉集には、大伴家持による『宮廷の男性たちが杜若で染めた衣服を身に着け、狩りをする月がやってきた』という歌が残っています。
燕子花と書かれることも
読み方は同じですが、『燕子花図』のように『燕子花』と表記されることも珍しくありません。燕子は鳥のツバメのことで、花の形状とツバメの飛んでいる姿が似ていることから付けられたとされています。
ちなみに、杜若も燕子花も中国の植物の名前から用いられたものですが、どちらも日本の杜若とは全く異なる植物になります。二つの漢字が当て字として用いられるようになった経緯が気になるところですが、はっきりと分かっていません。
ポジティブな花言葉はギフトにピッタリ
さまざまなシーンで喜ばれるギフトの一つが、『花』でしょう。花言葉やおすすめのアレンジメントを紹介するので、大切な人に贈ってみませんか?
花言葉は「幸福が来る」
ギフトとして花を贈るときは、状況や心情に合う花言葉で選ぶのも細やかな心遣いになります。杜若の花言葉は、『幸福が来る』です。ポジティブで明るい花言葉のため、ギフトとして活躍してくれる花といえるでしょう。
花言葉に詳しくない人も多いので、花言葉を記したカードを添えるのもおすすめです。誕生日などの記念日やお祝いに贈れば、普段なかなか言葉では伝えづらい「幸せになってほしい」というあなたの思いが伝わるかもしれません。
上品なアレンジメントがおすすめ
花はアレンジメントの仕方によって、印象が大きく変わります。花束を購入するときや自分でアレンジするときは、どのようなイメージに仕上げるか迷うかもしれません。
おすすめは、神秘的な深みのある紫色の花が映える『エレガント』なアレンジメントです。1種類だけでもよいですが、『幸福』という花言葉のカスミソウなどと合わせると見栄えがよくなるでしょう。
モスグリーン・金・銀を基調としたラッピングにすると、エレガントさが増します。高級感を出したいときは、和紙のラッピング用紙を使用したり、金や銀の大きめのリボンを使ったりすると豪華なイメージになります。
自分ではアレンジメントが難しい場合は、プロであるフローリストに任せるのもよいでしょう。
杜若の栽培方法
ぱっと目を引く鮮やかな外観と、ポジティブな花言葉を持つ杜若は、自宅でも育てられる植物です。自宅での栽培方法や注意点を紹介します。
日当たりのよい水辺か水の中で育てる
杜若は元々、水辺や湿地帯に生息している花です。水辺がある家庭はまれなので、日当たりのよい水の中で育てるのがおすすめです。
バケツや容器などに水を入れ、鉢植えを浸す方法になります。水換えのタイミングは汚れ具合にもよりますが、少なくても月に1回程度は行いましょう。
真夏と真冬以外であれば、いつでも植え付けが可能です。鉢植えには、通常の草花用の培養土が使えます。肥料も必要ですが、完全に根付くまでは少なめにするのがポイントです。
植え替えをするタイミングは、花が咲ききった後です。古い土を落として、新しい土に植え替えましょう。
寒さや暑さ、害虫にも強い
杜若は気温の変化に強いため、初心者でも育てやすい植物です。地域によっては、冬の寒さや夏の暑さが心配になるケースもあるでしょう。しかし、日本の気候下では多少のことでは枯れることがありません。
害虫による被害や病気がほとんどないのも育てやすさのポイントです。しかしながら、ごくまれにガの幼虫が茎の中に侵入し、花を枯らしてしまうこともあります。
水の状態を確認する場合などに、ついでに茎の状態をチェックするなど気を付けてみるとよいでしょう。
乾かさないのがポイント
杜若は、アヤメ属の植物の中でも特に水を好む植物です。一方で乾燥が苦手なため、きれいな花を咲かせるには、1年を通して『水を絶やさないこと』が重要なポイントといえます。
夏場は水を絶やさないだけでなく、『水温』についても注意が必要です。水温が上がり過ぎたときや元気がないときには、すぐに水換えを行いましょう。
また、日中は仕事などで家にいないケースも考えられます。日なたを好む植物ではありますが、水温が上がり過ぎないように、不在時には半日陰に置くなど工夫すると安心かもしれません。
構成/編集部