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なぜ、日本の陶磁器は世界から注目されているのか?

2017.03.11

 日本人は、陶磁器好きと言われている。陶磁器生産量トップ3以外にも、石川県の九谷焼、栃木県の益子焼、滋賀県の信楽焼など各地に人気の窯(かま)があり、それぞれが食器やインテリアなどに工夫を凝らしているからだ。

 陶磁器人気の背景には、日本独特の食文化が関係しているのかもしれない。器を手に持って食べることから手触りの良いものにしたり、料理の熱が手に伝わりにくいよう陶器が選ばれたり、軽くて持ちやすいサイズが好まれたり。直接口に当てることから唇への当たりの良さも基準になり、食材の旬を大事にするため、器にも四季を感じさせるものが望まれる。

 こうした好みを形にするので、素材もデザインも色彩も多様化したのだろう。NTTタウンページ株式会社は同社が運営する商品紹介サイト「TPDB.jp」で、毎月独自の都道府県ランキングを発表しているが、昨年発表した「陶磁器製造」のランキングデータから、日本の陶磁器についてひも解いてみたい。

◆アートか日用品か、陶磁器の歴史

 陶磁器とは、陶器と磁器の総称でそれぞれ性質が異なる。陶器が陶土と呼ばれる粘土が原料なのに対し、磁器は陶石と呼ばれる岩石が原料。数千年前にエジプト、中国、メソポタミアで、土をこねて火で焼き固めると丈夫になることから作られ始まった。日本の陶磁器は、安土桃山時代に茶の湯が発展したことによって、独自の進化を遂げている。

 器としての「用の美」だけでなく、工芸品としても日本の陶磁器は高い評価を得ている。特に、幕末の開港には、外貨獲得の主役にも躍り出た。ちなみに、陶磁器の包み紙として使われた浮世絵が、西洋の芸術家に高く評価されたことは有名だ。印象派に大きな影響を与え、ゴッホやモネ、マネも浮世絵をモチーフにした作品を多く残している。そして戦後、ちゃぶ台からダイニングテーブルに変化する過程で、一般家庭にも洋食器が普及し現在に至る。

 和食器が多様化した理由の一つに、洋食や中華のコース料理では同じデザインの食器で提供されるのに対して、和食では素材も形も異なる食器を料理に合わせて変えることがあげられる。そこに、日本独特の美意識、もてなしの意識、自然観が注がれて、独自の芸術性を獲得している。

 例えば、左右非対称やゆがみにも美を見出したり、高温で溶けたゆう薬が器面を流れる様子を景色と呼び、それを愛でたりするのは日本的なものの見方だ。陶磁器は、食卓を豊かに彩るだけでなく、とっくりや猫が描かれた食器、狸の置物など好みのものをコレクションとして収集したり、自分で焼いたり柄付けをしたりと様々な側面をみせてくれる。日用品でありながら、芸術性も併せ持つ奥深さが人気の秘訣だろう。

◆日本的美意識で世界を魅了

 陶磁器製造の登録件数は、この10年で4903件から2900件に減少している。人口10万人当たりの登録件数1位は佐賀県で38.68件、2位は岐阜県で27.44件、3位は長崎県で15.22件となっている。

「陶磁器製造」のランキング

「陶磁器製造」のランキング

 1位の佐賀県は、日本初の磁器の産地として知られている。17世紀初頭に朝鮮人陶工・李参平(り さんぺい)らによって陶石が発見されたことで、有田が一大産地になった。1650年代からはオランダの東インド会社を通じて、ヨーロッパに輸出を開始。1867年のパリ万博でも名声を得て、有田焼はジャポニズムのきっかけとなったことも有名だ。

 2位の岐阜県は、食器類の生産シェアで全国の約50%以上を占める美濃焼で知られる。瀬戸黒・黄瀬戸・志野・織部の名は、茶人ならずとも耳にしたことがあるのではないだろうか。千利休や古田織部らによる茶の湯の流行とともに、美濃焼は芸術性を高めた器で一時代を築き上げた。昭和初期に、歴史と美意識に加えて大量生産できる窯業としての生産体制を築いたことで、一大地場産業へと発展する。

 3位の長崎県は波佐見焼が知られており、こちらの日常食器のシェアは約20%。江戸時代から庶民の日常食器を作っており、くらわんか椀は粗い素地と簡素な絵柄で当時の人々の食卓を支えた。また、醤油の輸出用に作られたコンプラ瓶はフランスの太陽王ルイ14世や、ロシアの文豪トルストイが愛用したことでも知られている。庶民の器として誕生し、時代に合わせて変化を繰り返しながら、現在も身近で親しみやすい食器を作り続けている。

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